ふぁんふぁんさんより頂きものイラスト+α



曰く、「キャラのイメージで描かれた」とのこと。
ふぁんふぁんさん版B&Sコンビのカラーが感じられますね。
んで、ちょい刺激された輝のオマケ↓があります


世の中では──ここが地下基地であろうとも、この日は特別な日らしい。
多分に世界は平和だと信じていた時代の名残なのかもしれないが。


「おい、ノア。急げよ」
「・・・何で、そんなにやる気なんだよ。スノー」
「そりゃあ、歴とした任務でありますからね。少佐殿」
「ウソつけ」
 そんなこと、こいつに限っては絶対にあり得ない。事任務に関する限り、宇宙を翔ぶこと以外に、何の興味もないくせに。
 不意に奴はジーッと俺を見つめてきた。そして、吹きだす。
「似合わんなぁ。やっぱし、黒髪のサンタってのには無理があるか」
 喧しい。似合って堪るか。真赤なサンタの衣装だなんて。大体、お前も同じモンを着ているだろうが。
 全く! 仮にもシャトル・スタッフの俺たちが、フライト・スケジュールから外れているとはいえ、なぜに、こんな仮装・・・もとい、扮装をせねばならんのか。まさか、このために外されたんじゃあるまいな?
 どちらにしても、確かに“歴とした任務”であるには間違いがなかった。それは俺たちばかりではないが、軍関係の施設やらに、この出で立ちで慰問にいかねばならないとは。
「・・・・ミライには見せたくないな」
 彼女は笑ったりはしないだろうが、一寸、勇気がいるぞ。
 今日はクリスマス・イブ。ともかく、時間が迫っていた。
「んじゃ、参りますか。ノア・サンタさん」
「・・・・・やめい」
 全く不可解だ。何だって、こいつはこんなに楽しそうなんだ。


 サンタの慰問は特注の“トナカイ・エレカ”で広大な基地の中を巡っていった。しかし、訪れた先での幾多な反応──歓迎に当初の恥ずかしさは薄れていった。
 道化のようなものかと思っていたが、案外、喜ばれ、子どもたちには纏わりつかれる。
 軍が指定した慰問先の施設ともなれば、親の赴任で預けられている子どもや、さらには戦災孤児も待ち構えている。
 一年──それは俺などにとっても、決して遥か過去といえるような時間ではない。
 子どもたちが受けた傷は窺いしれない。それでも、その全てといかないまでも、必死に生きようとする姿を見ることもできる。自身の未来に向かおうとする幼い心が・・・。

「さあっ、次だ」
「・・・・どーしちゃったの、お前。急に積極的になっちゃって」
 意外とハードなスケジュールに、幾らかアゴを上げかけている相棒のサンタが息をつく。移動はまだいいが、元気な子ども相手は慣れない身には結構、大変だ。
「やたら、元気になるしさ」
 俺は何となく気恥ずかしさ を覚え、黙って“トナカイ・エレカ”に乗りこんだ。
「悪くはない」
「へ?」
「喜んで貰えるからさ」
 俺のことをクリスマスに現れる架空の人物に見立て、騒いでいる。つまりは俺が誰でも、子どもたちには関係がない。ブライト・ノアの名前も、元ホワイト・ベース艦長などとという肩書きも、軍の少佐の階級も何の意味も持たない。それが心地好いのだろうか。
「・・・・ま、それだけで良いんだろうけどな」
「自己完結するなよ」
 金髪をかき回しながら、相棒が笑う。苦笑だろうか。
「でもま、お前が良いって言うんなら、良いんだろう」
 何だ、その言い草は。お互い様じゃないか。少しだけ癪に障り、俺は“トナカイ・エレカ”のスピードを上げた。


 軍が何を思って、こんな発案をしたのかは知らない。正に人を道化と見立てていたのかもしれないが、案外と有意義だったと俺には思えた。
「や…、やっとこ、終わった」
「まだだ。後一件、残ってるぞ」
「あぁ? 取りこぼしなんてあったか」
 慌てて、慰問リストと睨めっこするのには構わず、地下基地のトナカイを走らせる。
「おい、ノア。やっぱし全部回ってるぜ」
「良いんだよ」
「何が良いって──!? おい、この道」
 気付いたらしい 。程なく、着いたのは官舎区域。
「・・・・帰隊報告もしてないってのに」
「俺がやっといてやる。ホレ、一番肝心なトコにサンタが現れないで、どうするんだ」
「お前にしちゃ、気が利いてるのな」
「喧しい。さっさと行けっての」
 相棒は軽く敬礼してみせると、駆け出していった。プレゼントがあるかどうかは怪しいが、一応、白い袋を担ぎ、真赤な衣装を着こんだまま──向かう先にはあいつの大事な家族が待っている。
「メリー・クリスマス、スノー。ミリシアに泣かれないことを祈ってるよ」
 大好きなパパも、あれでは見慣れぬ真赤な“オジサン”だろうから。

そして、日が変わる。
今日はクリスマス──それは特別な日。
世界は平和だと信じていた時代の名残なのかもしれないが、
あんな戦いの後でも、いや、だからこそ、信じたいとも願うのだろうか。

何も変わってはいないのだろう。
それが現実だとしても、どうか神様、この世界に平安を・・・。

2002.12.25.

トップ あずまや