剣と剣 「やった……!」 トリンが正式にソウジに剣を教えるという──その申し出が本当に心底から嬉しいのだろう。普段はクールに振る舞うソウジが満面の笑顔を浮かべていた。喜びの余りの前方不注意から、柱に額をぶつけるほどに、浮かれていたのかもしれない。
若さ故の純粋さや率直さか……。以前は感情を押し殺すようだったというソウジだが、この戦隊の一員となり、仲間と行動を共にする内に、随分と変わったという。空蝉丸が合流してからも、確実に表情も豊かになった。 それにもまして、空蝉丸はトリンがソウジの希望に沿うようにと歩み寄ってくれたことも喜ばしいと思う。 「……本当に良かった」 呟きを聞き止めたダイゴが傍に近付くと、ポンと肩を叩いた。 「ウッチーもソウジと一緒にトリンに教わったら、どうだ」 空蝉丸は本当に驚いた表情で、ダイゴを見返した。全く、考えもしなかったことを問われたからだ。 「いや、まさか…。拙者、己が分は弁えております故」 あっさり、やんわりと否定したことに、ダイゴは不思議そうに首を傾げた。 「何でだよ。雷電剣に閃光の技が加われば、とんでもなくブレイブな剣になるんじゃないか?」 ワクワクしながら、「見てみたいなぁ〜」とか呟くのには苦笑するよりない。 「キング殿。拙者、トリンの剣を我が物にしたいとは思わぬでござるよ」 「何でだよ。あんなに凄い剣だぜ。試してみたいって、本気で思わないのか」 「拙者には拙者の剣がある故。それをただ、極めたいと願うのみにござる」 「でもよ、他の奴の剣を取り入れるのだって、悪いことじゃないだろ。現にソウジのことは、ウッチーだって、良かったって、今言ってたじゃないか」 納得いかないのか、妙に食い下がってくる。この辺は、やはりダイゴもまだまだ若いという思いが湧く。 「ソウジ殿は、あれで良いのでござるよ。まだまだ、己が剣を求めている最中《さなか》におり、多くを知ることはソウジ殿の血肉となるのでござるよ」 きっと、トリンの凄まじき剣も見事、収め、ソウジだけの剣をと成していくことだろう。 イアンやノブハル、アミィに囲まれているソウジに目を向け、空蝉丸は見守るように微笑んだ。 「閃光を纏いし斬撃が、如何なる剣へと生まれ変わるのか。誠、楽しみにござる」 それは掛け値なしの、本心だった。 「フゥン、もったいねぇなぁ」 ダイゴもまた、本心から残念そうに言ったが、話はそこで終わった。 ☆ ★ ☆ ★ ☆
初めて、ソウジの剣を見た時から、余りにも真直ぐな…、真直ぐすぎる剣が危ういと思ったが、反面、羨ましくもあった。 真直ぐなだけでは“戦い”では、いつか後れを取ることもあるかもしれない。それでも、空蝉丸はこのまま、極めてほしいとも願う。何ものにも染まらずに──……。 しかし、ソウジは空蝉丸の技も会得したいと望んだ。 ただ、生きるために、戦うためだけに磨いた剣技を、希ってくれた。 嘗て、戦に塗《まみ》れていた時代も、現代に目覚めてからも、自分は何も…、何一つ、この世界に残すものなどないと、信じていた。 だが、そうではないのかもしれない。ソウジを通じて、自分が生きた証を、空蝉丸という剣士が確かに存在したのだという証を、この世に残せるのかもしれない。 そんな風に期待してしまうのは、或いは愚かしいことだろうか。
それでも、望んでしまうのだ。 ダイゴが言うところの“ブレイブな剣”に、トリンだけでなく、己が剣も反映されるのだとしたら、見てみたい。 心底から、そう希う。 了
お約束の入れ替わり回より☆ 剣士がまた増えたもんで、その関わり合いも面白そうだなとか思っていたら、こういう展開ですか♪ その気になったら、ゴールドも結構、シルバーの必殺技は再現できるんじゃないかなー、とか言ってみる。
んで、恒例入れ替わり回★ まぁ、面白かったけど、唯一、残念だったのは入れ替わった後の声も、変わった後の中身の人のアフレコだったこと。心の声ならともかく、体の声まで変わってしまうのは変でしょうがっ。『ゴーバス』もそうだったけど、お子様が混乱するから、なんですかねぇ? 『ゴーカイ』ではハカセとルカが入れ替わった後、中の人がちゃんと、入れ替わったかのように演技してました。あれは凄かった。凛々しく男前なハカセと鈍くさい?ルカって^^ アミィちゃんの声で「聞いて、驚けっっ」とか、やってほしかったし、とにかく、体にマッチしてない声が寧ろ、違和感ありまくりでした。勿体ないな。
でも、物語自体は良かったですね。ソウジ君もまた一歩、前進しました。反面、川辺で語るウッチーの言葉が当時は、ちょい気になったけど──何か、漠然とした不安が今回のラストに繋がってしまいました。 2014.04.09. (Pixiv投稿:2013.11.20.)
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