雪 雷 デーボス軍の動きはやはり、大分、活発になっている。今日も町中に出現し、暴れ回ってくれた。 もっとも、ゾーリ魔だけだったので、大した脅威にはならなかった――とはいえ、それは対抗できる力を持つ自分たちだから、言えることだ。 普通の人々にとってはゾーリ魔ですらが大いなる脅威に決まっている だからこそ、自分たちが戦わなければならない! 万事、楽天的に振る舞うダイゴでも、そういう強い思いは抱くものだ。 誰もが笑って、当たり前の日常を過ごしてほしい――そう心から思っているからだ。 南の島でトリンに会い、ガブティラに会い、“黄金の地”である日本に来てからは仲間となる他の“強き竜の者”にも会った。 最初は「集まりの悪い戦隊」と自ら呼んでいたほどで、互いの素性も明かさずにいたが――ダイゴはその必要を全く覚えず、その場で、あっさりと変身を解き、素顔を晒したものだ。 その後、一人また一人と仲間たちを本当の意味で、知ることになり、協力するようにもなれた。幾つもの合わせ技も使いこなし、五人揃っての獣電竜合体も可能になった。 キョウリュウジンを見て、トリンが感涙にむせったのだから、本当に奇蹟に等しいことを成し遂げたのだとの充実感すらあった。 それから、かつての先輩“強き竜の者”ラミレスが、今は魂の戦士《スピリット・レンジャー》として、キョウリュウジャーの援護をしてくれていることも知った。
そして、今――次なるキョウリュウジャーが現れた。ただし、実力や戦歴からいえば、遙かに先輩だった。 四百年以上の昔、この国が戦乱に満ちていた時代に活躍したという“伝説の豪剣士”空蝉丸。彼こそが“雷鳴の勇者”キョウリュウゴールドだった。 そして、ゴールドはスピリット・レンジャーではなかった。 六人目の“強き竜の者”は伝説と称されるだけに、凄まじい剣技で、敵を滅する。圧倒されるのはダイゴたち獣電戦隊も同じだ。 しかし、ダイゴは素直に、とにかくスゴいと感じた。そして、本当に頼もしいと――にも関わらず、ともに戦うことは拒否された。独りで、どこまでも独りきりで戦おうとしている。あれから、二度ほど遭遇しているが、一向に態度が改まる様子はない。 常に変身した状態で現れるのは戦うためなのだから、当然だとしても、一度として、素顔では面と向かい合ったこともないのは気になる。 せめて、きちんと話したいと思っているのに、これでは、それも無理だ。話をする必要などないと、彼が思っているのだとしても、せめて…、せめて一度、向き合って、話がしたい。
戦闘後、スピリットベースに戻った一同はそれぞれ、費った獣電池をチャージボックスに置いた。その時、ダイゴは一本だけ、六番の位置に獣電池があるのに気付いた。 持ち主はプテラゴードンの“相棒”――キョウリュウゴールドだ。 今日の戦闘でも会うには会ったが、それだけでもあった。敵を蹴散らしたゴールドは、彼らを顧みることなく、去っていった。 この一本はトリンが持っていたものか。傷だらけで沈黙していた六番獣電池を見たことがあったが、ゴールドと獣電竜プテラゴードンの復活で、スピリットがチャージされるようになったのだ。傷までが綺麗になくなっているのを確認した。 それも満タンにチャージされているので、気付かされた。 戦えば、獣電池のスピリットは当然、消費される。必ず、チャージしなければ、戦うに戦えない。 ゴールドは愛剣に三本もの獣電池を使っていた。変身に一本、獣電竜を呼ぶにも一本必要だ。そして、この一本。 「うわ…。あいつ、六本以上、持ってるってことか」 ダイゴたちが持つ“相棒”の獣電池は四本ずつで、空蝉丸より少ないが、四百年以上前の戦国時代に、独りで戦っていたのなら、六本でも多いとはいえないか。 他の獣電池も、ガーディアンズを含めて、どれだけ使えたのか……。トリンならば、知ってはいるだろうが。 「やっぱ、スゲェな、あいつ」 やはり、ちゃんと話したいと、益々、思う。しかし、どうすれば、その機会を作れるのだろう。
チャージボックスを睨むように立っていたのを訝しんだらしいトリンが歩み寄ってきた。 「どうした、ダイゴ。随分と真剣な顔だが」 「あ、いや、ちょっとな。空蝉丸のことを考えててさ」 「空蝉丸か…。気を悪くしてはいないか、彼の態度を」 遠き戦国の世、ともに戦った戦友と呼べる相手が蘇ったのは喜ばしいだろうに、近付きもしない言動を不可解に感じているようだ。 しかし、ダイゴは思いもかけないことを尋《き》かれたな、と苦笑した。 「別に、んなことないって。空蝉丸には空蝉丸の思いってもんがあるんだろうしな。あんなに強くても、いつも全力だし、スゲェとは思うぜ。あいつから見れば、俺たちが甘いってのも確かなんだろうな」 「ダイゴ……」 「でも、一度は、ちゃんと話したいけどな。戦いの後じゃ、すーぐ、どっかに行っちまうし」 手詰まり感に、らしくもなく、溜息をつくと、 「話か…。機会ならば、ないわけでもないぞ」 「え?」と、見返すと、トリンは一本だけ残された六番獣電池を手に取り、握り締めた。 「戦い続ける限り、チャージは必要だ。だから、必ず此処に来る。それができるのはこのスピリットベースだけなのだから」 「そっか! そんな簡単なこと――いや、簡単すぎて、気付かなかったぜ」 ウンウン頷くと、他の皆に聞かれたくないのか、トリンは幾らか声を潜めた。 「実は前の戦いの後に、一度、此処で会った」 「へぇ、そうなのか」 「あぁ…。君たちがいないのを見計らって来るだろうと、待っていたのだ。もっとも、大した話もできなかったがな」 考えることはこの賢神も同じということか。とはいえ、話す雰囲気でもなかったとは見て取れる。 件の獣電池を見て、嘆息する。 「これも渡したつもりだったのだが、置いていってしまったのだ。何故なのだろうな」 まさか、トリンまで拒絶しているということだろうか。 「なぁ、トリン。あいつ…、空蝉丸さ。獣電池は何本持ってるんだ? この前の戦いじゃ、目一杯、荒れてたけど、五本は必要だよな」 「その通りだ。プテラゴードンの獣電池はこれも含めて、六本だ。あの頃は装備を造るのも容易くはなかったのでな」 今は違う――との含みが感じられたが、それは置いておこう。それより、空蝉丸だ。 「ガーディアンズの獣電池は?」 「幾つかは使っていたが…、最後の戦いでは、持っていなかった」 本当に、孤軍奮闘の厳しい戦いを続けていたのだと判る。 「じゃあ、今は五本しか持ってないってことか」 「うむ。今日の戦いでも現れたのだろう。ならば、何れ、此処に来るはずだ。その時には必ず、これも渡さねばならないのだがな」 六番獣電池を握り締めたトリンはもう一つ深い溜息をつく。 「それと、食事もな。前も、せめてと引き留めた。腹が減っては戦はできぬ。――侍には有効だ」 「なるほど、メシかぁ。そりゃ、心配だよなぁ。ハラ減ったら、いいことナンもないしな。力出ないし、イライラするし。あ、もしかして、あいつ、四百年振りなんで、腹ペコで、苛ついてたんかなぁ」 「ダイゴ…、それはちょっと」 「冗談に決まってんだろう。でも、いいこと聞いたぜ。サンキューな、トリン」 「……何をするつもりだ」 獣電池を元の場所に戻しながら、トリンは少しばかり不安そうだ。 ダイゴは全開で笑い返す。 「ただ、話をしたいだけだよ。でも、どうせなら、メシくらいは奢ってやろうかなってさ♪」 機会を作るのならば、確かに此処で相手が来るのを待ち構えているのが一番、早いに違いない。 「しかし、昔の日本人の好きな食い物ったら、何がいいのかなぁ」 「奇を衒《てら》わんのが一番だと思うがな。何せ、今よりずっと、薄味だ」 四百年以上前の話だ。調味料自体が少なかったと、ダイゴは知ることになる。 ★ ☆ ★ ☆ ★
夜も深まり、スピリットベースも静まり返る。ダイゴはサマーチェアに体を休めていた。しかし、完全に眠っていたわけではない。外界の気配に対し、自然と反応するように、長い放浪生活の中で、訓練されていた。 不意に目を開く。転送台に気配が湧き上がったのだ。押し殺すような気配は待っていたものに違いない。ただ、戦場で感じるほどには荒くはない。むしろ、静かですらあった。 ダイゴは目だけを動かし、そちらを見遣る。転送台に蹲るような影が動いた。そして、そろりと足音も立てずに、動き出す。真っ直ぐに、チャージボックスへと向かった。 カチャカチャと獣電池を置く音が静かなスピリットベースに響く。その間に、ダイゴはムクリと体を起こした。 そして、振り向いた人影――空蝉丸はダイゴに気付き、体を強張らせ、立ち竦んだ。 「よっ、空蝉丸。やっと来たな」 「…………気配なぞ、感じなかったが」 やっと、それだけを呟くのに、ガリガリと髪を掻き回し、苦笑してみせる。 「悪ィな。俺、気配殺すの、上手いんだわ。でないと、獣の餌になっちまうからな」 空蝉丸はダイゴが父親に連れられ、幼い頃から、世界を放浪し、サバイバルな野宿経験もハンパないことなど、知る由もない。それでも、今の時代に於いても、些か変わった暮らしをしてきたことは伝わったようだ。 ダイゴの顔をジッと見つめた空蝉丸は何故か、我に返ったように慌てて、目を逸らした。 素顔で目が合ったのは殆ど初めてだなー、などと、内心で、ダイゴはガッツポーズをする。これだけでも、大いなる進歩だと思えるからだ。 だが、当然のように、転送台に向かいかけるのに、慌てて、跳ね起きた。 「おいおい。ちょっと、待てよ。ドコ行くつもりだ」 「お主には関係がない」 にべもないとはこのことか。冷たくキッパリと言いきられれば、普通なら、狼狽《たじろ》いてしまうだろう。 だが、あいにくとダイゴも普通とはいえなかった。 「獣電池ないだろう。そのまま、行くのは危ないぜ」 「……ゾーリ魔なぞ、この刀さえあれば、どうとでもなる」 背に背負った大刀は空蝉丸と共に刻を越えた逸品だろうか。しかし、 「そりゃ、あんたが強いのは良く解ってるけどさ。カンブリ魔やデーボ・モンスターが出たら、さすがに厳しいだろう。それに一番、問題なのは今のこの国じゃ、刀は許可がないと持てないってことだぜ。警察の厄介にでもなったら、面倒だろう」 「けいさつ? 許可とは許しか」 日本語であっても、言葉が通じにくいことも多い。 「あー、つまり、国が持つのを許すってこと」 「許しがいるとは…。武器なくして、如何にして、争いから身を守るのだ」 ダイゴはさすがに困った。日本で育ったわけではないが、それでも、空蝉丸に比べれば、ダイゴはまだこの国の現状に通じている方だ。
空蝉丸の考え方は、世が争いに満ちていた時代のものだ。今でも「人を見れば、泥棒と思え」など言うこともあるが、空蝉丸の時代はもっと酷かっただろう。物を盗まれるだけなら、まだしも、命すら奪われかねない――そういう時代だ。 今は……少なくとも、この国ではその前提は異なる。人が人の命を奪う――そんな事件が全くないわけではないが、だからこそ、事件と呼ばれるように、当たり前のことではなくなっている。 ゾーリ魔が出現すれば、人々は右往左往することになる。警察も、軍隊ですらが古代からの魔物には太刀打ちできない。 とはいえ、空蝉丸が戦国装束で、真剣を振り回していたら、余りにも目立ちすぎる。 「悪いことは言わねぇから、その刀は人前では使わない方がいいぜ」 刀はいわゆる“武士の魂”だろう。とすれば、簡単に手放したりもしないだろうが。 もっとも、無理矢理、取り上げるなぞはできるはずもない。空蝉丸は何やら考え込むように黙り込んでいた。 ダイゴは気を取り直し、殊更に明るい声を出した。 「トリンに言われたんだよ。もし、あんたが来たら、飯食わせてやってくれってさ」 空蝉丸は面食らった顔をした。その顔を顰《しか》め、「余計なことを」と軽く舌打ちする。 「でもさ、腹が減っては、あー、イクラはデ□ーズってな」 「………………いくら?」 何となく、トリンと同じ言い様は避けようとか思ってしまい、ノッさん張りにダジャレをカマしてみたが、戦国生まれの剣士には全く通じなかったようだ。 思いっきり怪訝な顔で見返されてしまった。
後で、このことを仲間たちに話したら、盛大に呆れられてしまう。 『大体、タイムスリップしてきたばかりも同然の侍が▽ニーズを知ってるわけないだろうが』 『元々、アメリカのファミレスだものね』 『イクラだってね、由来はロシア語だよ。戦国時代どころか、江戸時代の日本にだって、まだ、なかったんだからね』 『そ、そーなのか。俺、寿司の中じゃ、かなり好きなんだけどな』 『今みたいなお寿司は、せめて、江戸時代にならないと』 『そっか。日本といや、“フジヤマ、ゲイシャ、サムライ、スシ”って、イメージだけどな』 『いつの時代の外国人旅行者《おのぼりさん》なのっ』 『そういえば、ニンジャとかも見かけないものね』 とか何とか……。 閑話休題《それはさておき》 「まぁ〜、それはいいや」 むしろ、忘れてくれと言いたい。 「とにかく、座れよ。まぁた獣電池、取りに来るのも二度手間だろう? だったら、その間に飯食おうぜ。自分で言うのも何だけど、俺は料理の腕も結構、イケてるんだぜ」 迷っている様子の空蝉丸の腕を掴むと、強引に引っ張り、座に着かせた。 「ホラ、今、持ってきてやるからな」 「……腹具合を攻めれば、断るはずがないとでも思っているのか」 「まぁな。ちょーっと、卑怯かもしれねぇけど。獣電池はスピリットをチャージしなけりゃ、使えねぇ。人間だって同じさ。生きてりゃ、腹は減るんだからな」 「生きて…、いればか……」 微かに表情が揺らめく。何を考えているのか――何となく想像はつくが、今はつつくのは止めておこう。 とにかく、「一緒に飯を食う!」だけでも、大いなる前進ではないか。 ダイゴが用意したのはあっさり和食と、少しばかり調味料を駆使した洋食だった。箸だけでなく、スプーンとフォークも用意した。 箸は当然、ダイゴよりも遙かに美しく使う。スプーンも匙としては知らぬわけではないようだ。しかし、フォークは――教えれば、案外、容易に使うようになった。 さすがに戦国時代に、キョウリュウジャーの装備を使いこなしてただけに、器用かつ適応能力が高いのだろう。 「どうだ、美味いか」 「……さぁな」 「さぁな、って、作り甲斐のない反応だなぁ」 溜息をつくと、空蝉丸はフォークを置いた。 「正直、良く解らん。妙に舌が痺れる感じがするが」 ダイゴは改めて気付かされた。トリンが言っていたように、本当に薄味にしか慣れていないのだ。 「ただ、不味いとも思わんが。食が進むのは確かだ」 「え、マジ? ハハッ、そっかー、それで十分だぜ。そうだ。お茶、飲むか」 空蝉丸ははっきりと判るほどに眉を上げた。 「トリンも出してくれたが、それほど、茶があるのか?」 「あぁ、ノッさんが持ってきてくれたんだ。淹れ方は教わったばっかだから、美味く淹れられると良いんだけどな。やっぱし、お茶はあんたの時代にもあったんだな」 「あるにはあったが、滅多に飲める代物ではない」 これもまた、時代による違いか。お茶もまた、今や、手軽に飲める代表例だ。もっとも、彼が知る茶と同じかどうか。だが、その場でダイゴが淹れ始めたのを見て、「ほう、左様な淹れ方をするのか……」などと呟いたところからすると、やはり違うのだろうと思う。 そして、今、目の前で湯呑みを両手に持ち、香りを聞くようにして、微かに頬を緩ませる剣士に、ダイゴは目を瞬かせる。 常に接する時は変身した状態だったので、彼の表情も想像していただけだが――今の彼は、とても柔らかい印象だ。その想像とは異なる。 もしかしたら……。 ダイゴは漠然と湧き上がる内なる声に、そっと空蝉丸を見やりながら、自分も湯呑に口を付けた。
「馳走になった」 「良いって良いって。俺たち、仲間だろ」 眉を顰め、見返してくるのに、ダイゴは手を振る。 「あんたがどう思ってるかはこの際、置いとく。でも、俺はそう思ってるから」 暫くダイゴを見つめていたが、プイと目を逸らすと、空蝉丸はチャージボックスに向かった。 「なぁ、空蝉丸。これからも、飯食いに来いよな。それから、チャージするのに、時間を選ぶなよ」 スピリットベースから人がいなくなるだろう、深夜を狙って来るようだが、それまでにまたデーボス軍が暴れ出したら、チャージが不完全なままで、戦うことにもなりかねない。 「戦いが終わったら、直ぐに来るんだぞ。万全の備えって奴だぜ」 聞いているのかいないのか、空蝉丸はチャージを終えた獣電池を取ると、懐に仕舞い込んだ。 だが、一本だけ――元からあった獣電池が残っているのを、肩越しに見留めた。しかも、やはり、そのまま置いていこうとするのだ。 その残った獣電池を掴み、転送台に乗ろうとする空蝉丸の前に回り込んだ。 「忘れモンだぞ」 「――……」 何故か、顔を強張らせるのだが、勢いに任せて、獣電池《わすれもの》を手に握らせようとする。 すると、火にでも触れたかのように激しく振り払われた。しかも、その表情が――一瞬だけ閃いたが、酷く傷ついたように見えたのだ。 振り払われたのはこちらなのに――つまり、咄嗟に、そうしてしまったことに、彼自身が傷ついているような……? 違和感を覚えたが、それは直ぐに消えてしまった。空蝉丸は冷え切った眼差しを向けるだけで、拒絶を示すのだ。 だが、ダイゴも引き下がるつもりはない。このトリンが持ち続けた獣電池だけは必ず渡すと、そう決めていたのだ。 「全力で戦うには予備があった方がいいだろう。それこそ、万全を期すんならな」 この言葉は効いたようだ。やはり、戦う者にとっては第一となるべきは、戦備えなのだ。 ここは一息に、強引に決める──振り払われたばかりの手をガッシリと掴むと、今度こそ、獣電池を握らせる。 「持ってけよ。ちゃんと使ってくれよ。でないと、こいつだって、待ってた甲斐がないだろう。こいつの本来の主は他の誰でもない、あんたなんだからさ」 獣電池は“強き竜の者”ならば、誰でも使うことができる。使うことはできるが、最大限の力を発揮するのはやはり、その獣電竜の“相棒”でなければ、叶わぬことだ。
暫く睨み合う状態が続いたが、急に張り詰めた空気が和らいだように感じた瞬間、空蝉丸が息をついた。 「確かに、お主の言う通りだ」 手を引くと、握らせた獣電池を先刻同様、懐に収めてくれた。ホッとしたダイゴも思わず、フゥ〜と盛大に大きな息を吐き出した。 「良かったぁ。これで、トリンも喜ぶぜ」 すると、珍しく今一度、視線が振り向けられた。何やら言いたげではあったが、結局、それ以上、口を開くことはなく、転送台に向かう。 「じゃあな、空蝉丸。また、な」 だが、やはり空蝉丸は黙ったまま──姿を消した。 転送台から光の残滓が完全に消え失せると、スピリットベースは元のような静けさに包まれた。 「……また、な」 また、と言えば、それはデーボス軍との戦いの場で、ということになる。まだまだ、協力し合うには程遠いが、ダイゴは決して、諦めてなどいない。必ず、立ち去った黄金の“強き竜の者”に認めてもらうのだと、決意も新たにする。 空蝉丸の使った食器を片付けながら、初めて接したに等しい生身の姿を思い起こす。 「でも、やっぱ、なーんか、気になるんだよなぁ」 戦場で見せつけた烈しさとは、どうも重ならない。戦いになると、スイッチが入るように、性格が変わるような面でもあるんだろうか? 「ま、それもその内、判るよな」 それより、日中に市街を動く必要もある以上、あの恰好を何とかするのが先かもしれない、などと考えたりもするが、ダイゴが何とかする前に、その問題は解決されることになる。
久々に『クール・ウッチー』のシリーズ続きです。我らがキングによる空蝉丸の印象…想像編です。実際のところ、彼だけは殆ど反感持ってなかったように見えたから。ま、偽イアンに宝物(やっぱ偽物だけど)壊されても、あんなにポジティブな受け取り方のできる人ですからね。こんな感じではないかと。
トリンが持っていた六番獣電池がいつ、空蝉丸に渡ったのか? 11話で、ピンクに一本貸した時にはもう六本持っています。アミィちゃんに素がバレた後から翌日の戦いまでは『お着替え』があるので、スピリットベースに行く暇はなさそうだし、他のメンバーにも会っていないところを見ると、11話以前かな、と。 クール・ウッチー・シリーズは今のとこ、この10話から11話の短い時間の話なので、話の流れを表なんかにして、獣電池お渡しイベントを発生させました。トリンの時は置いていったけど、ダイゴは二度目だし、勢い勝負で、押し付けてしまいそうで^^ ウッチーの所作を見ていると、何気ないところに、昔風な美しさが取り入れられているように思えます。一番、判りやすいのはお茶の飲み方ですね。りんちゃんの(ある意味)スッキリ・ドリンクですら、両手持ちで☆ 殺陣が特技だけに、素人目にも剣の扱いも確かな感じだし、中の人には何れ、本物の?時代劇にも出演してもらいたいものです。 2014.04.17. (Pixiv投稿:2013.11.28.)
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