進化の過程 戦いは次第に厳しくなっていくものだが、今日は特に思わぬ事態の連続で、当初はソウジとトリンが戦線離脱をしていたこともあり、一層の苦戦を強いられた。 しかし、そちらの騒動はトリンが巧く収めてくれたようだ。一体、どうやって? とは気になるところだ。ソウジの母が彼を「トリイさん」と呼んでいたこともだが、説明を求めても、はぐらかされてしまうのだ。 ソウジはソウジで、今日は両親と久し振りに一緒に過ごすことになったとかで、早々に帰っていった。 何れにしても、両親とのことが、そして、トリンの導きがあって、キョウリュウジャーたちの中でも最強に類する必殺技、トリニティストレイザーの会得を成し遂げたのだ。
「それにしても、ソウジ君は凄かったね」 「マジにブレイブだったぜ。遂にトリンの必殺技をモノにしちまったんだからな」 「スッゴく、キレイだったし♪」 「背に、翼の幻影が見えもうした。彼の技を極めると、あそこまで再現できるものなのでござろうか」 スピリットベースに戻った仲間たちも一様に興奮していた。 「あれはソウジのブレイブが究極にまで高まったことで、隠されていたザクトルの力が引き出されたんじゃないかと思うな」 一人、比較的冷静なイアンの言葉に、だが、全員の視線が集中する。 「ソウジ?」 「ボーイじゃなくて?」 「うっせ。あんなん見せられたんだからな。あ、でも、あいつをどう呼ぶかはまだ考え中。言うなよ」 些か焦ったようなのに、皆が苦笑する。初めて会った頃から、変わっていないが、ヒネクレ具合も素直じゃない度も相変わらずだ。 それ以上、突っ込まないのが無難だろうが、ダイゴがそこまで考えていたかは定かではない。どちらかというと、己の興味を優先させただけ……の可能性が高い。 「それより、隠されていた力って、何だよ」 「あー、それな。その前に恐竜が鳥の祖先だって、知ってるか?」 「あーあー、多くの恐竜が隕石衝突《インパクト》や氷河期の到来(つまりが例のゼツメイツの仕業★)で、絶滅しちゃったけど、一部の小型恐竜が生き延びて、やがては鳥に進化したってた説だね」 「ウソ☆ 本トなの」 「マジかよ」 「トリとは…、あの、空を飛ぶ鳥でござるか」 ノブハルが知っていたのは順当なところだろう。他は知らないというのもイアンの想像通りの反応だ。 「最新の研究で解明されてるんだ。哺乳類の祖先も小型種が生き延びたんだからな。で、ここからが肝心。その鳥へと進化していった種で、初めて空を飛んだとされるのが――ラプトルの仲間なんだよ」 「そうなのか!?」 ラプトルといえば、ソウジの“相棒”ザクトルの種だ。ザクトルはヴェロキラプトルが進化した獣電竜だった。 「あぁ、ヴェロキラプトルは飛ぶまではいかなかったが、身軽で、すばしっこい羽毛恐竜だったんだ」 「うもう…、恐竜。羽毛、羽でござるか?」 「そっ、ラプトルだけじゃないぜ。実はティラノにも羽毛があった――可能性があるんだとさ」 「凄いものでござるな、学問とは。誠に、素晴らしい。疾うに消え去り、骨しか残っていないものからでも、そこまで解き明かすことが叶うとは」 感に堪えないような空蝉丸の隣で、ダイゴは組んでいた腕を解き、その肩を抱いた。 「ティラノも鳥にかなり近いってことなんだな。俺は鳥の先祖なら、プテラとかかと思ってたぜ」 「空飛ぶから、か。そう単純じゃないのが進化の不思議って奴かもな。プテラノドンなどの翼竜は本当はあんまし羽ばたかなかったんだ。翼も鳥みたいな羽じゃなくて、モモンガみたいな皮膜が発達していて、滑空していたらしい」 「ももんが?」 「ウッチーは知らないかな、こんな感じで、木から木に飛び移る小動物」 手を使って、表現すると、空蝉丸は満面の笑顔で手を打った。 「おぉ、むささびでござるな。妖怪変化の類かと思っておったが、何時ぞや、理香殿と一緒にテレビで見て、認識を改めたでござる!! いやはや、実に愛らしく」 「妖怪って…、時代だなぁ」 因みに、モモンガが『モモンガ』と呼ばれるようになったのは江戸時代頃で、それ以前はモモンガも『ムササビ』だったのだ。 「じゃあ、プテラはある意味、モモンガの仲間ってことね」 かーなり外れているアミィの言葉だが、空蝉丸は無邪気に喜んでいる。どうやら、かつての戦国生まれの伝説の豪剣士は甘味だけでなく、愛くるしい小さな生き物にも目がないようだった。とはいえ、あの“相棒”に可愛らしさを求めて良いものなのか、激しく悩むところだが。 「まぁ、プテラゴードンはしっかり、羽ばたいてるからな。これも進化だよな」 「だな。獣電竜たちも、スッゲぇブレイブだぜ!!」 そこに落ち着くのは如何にもダイゴらしい。 ☆ ★ ☆ ★ ☆
実はこの時、イアンが話に触れなかったこともあった。 プテラノドンなどの翼竜は『空飛ぶ恐竜』と思われているが、実は恐竜とは別の種だということを!? 多分、イアンとノブハル以外はこの恐るべき事実を知らない。殊に空蝉丸が知れば、結構、本気で衝撃を受けるのではないかと思われる。 もっとも、かつて、トリンがデーボスに対抗するために、“強き種”を選び出した時には、そんな些細な種の違いなど考えていなかっただろう。 トリンに応えた側にも当然のこと――ただただ、地球という生命体《ほし》を守護《まも》り、救うために、永き戦いに身を投じることも辞さなかったのだ。 その想いに応えるが如く、新たな種から“強き竜の者”がその“相棒”として選ばれるようになった。それまでも、気の遠くなるような時を経てのことだ。 それこそ、正に種を越えて、共に戦う覚悟を決めたということに他ならない。 そして、それは今更、改めて告げる必要もないことでもあった。
「……トリンが、パッと見には鳥にしか見えないのも、恐竜の進化と無関係じゃなかったりしてね」 「名前だってさ、トリンの方が先だろ。もしかして、語源になってたりしてな」 「確かに。日の本の国は何といっても、“黄金の地”でござる故」 何やら、盛り上がっているのに、イアンも苦笑するしかない。トリンは生まれをいうならば、デーボスだ。だが、誰も疑ってなどいない。既に経験していることでもあり、彼が傷つき、失われるのは悲しく、辛く、苦しいことだと知っている。 確かに、種の違いなど、全く意味のないことだと思えるのだ。 苦しい戦いが待っている。この仲間たちとともに、最後の最後まで――一人として、欠けることなく……。 それが願望だとしても、希わずにはいられない。 了
遂にソウジ開眼☆ てな“緑の閃光”なグリーン版トリニティストレイザー炸裂!! でも、源流先生を抱えた黒マントにぶちかますのは危険極まりないぞー。 で、ソウジが翼を背負ったのは、ラプトルが一番、近い鳥の祖先の恐竜らしいからかな、とかで、こんな話が湧きました。 にしても、鳥居さん!? なぜ、トリイが鳥井でも鳥飼でも鳥生でもなく、鳥居だったのか? またしても、『プリトヨ』と絡めたくなってしまいましたが、さすがに自重自重☆ ま、声優さんたちがあれだけ顔出し出演しているので、何れはと思っていましたが──やっぱりだったね。次はカオスの……は無理かな。さすがにあの展開じゃ。(と思ってたら、最終回に市民役で^^)
翼竜が恐竜ではないという衝撃の事実★ まぁ、これは結構、知られていると思いますが、細かい疑問といえば、トリンが地球に来たのって、何時なのかなとか。で、獣電竜を創り出したのも……恐竜(その他;;;)が進化した獣電竜だけど、結構、生息時代にバラつきがあります。プテラやステゴッチ、プレズオンやブラギガスの御先祖様?は恐竜絶滅期より前に、実は絶滅してるとか!? これも知ったら、ウッチー泣くかもなぁ。ジュラ紀にはデーボスが襲ってきていたとしたら、戦いはもっと長いことに……。獣電竜も揃ってないことになって──あぁ、トリンTT そんなんで、ネタ一つにはなりそうですが。→てか、書きました。 勝手にウッチーをカワイイもの好きにしてしまったが……それじゃ、明君じゃないかっ☆ 2014.12.10. (Pixiv投稿:2014.01.08.)
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