そんなこと言ってる場合じゃない


「完成! プテライデンオーウェスタン!!」
 高らかな宣言とともに、強力な銃と剣を備えた雷の巨人が大地に立った。……が、
「邪魔だな、全く」
「おーい、何か言いましたか〜」
 少しばかりフザケた調子で言ってみせたのは黒の戦士。金の戦士を挟んで、反対側に立つ緑の戦士はプイとソッポを向いた。
 黒の戦士――イアンは力なく説得にかかるが、
「こんな時にまで拘るなよ。これが一番の布陣だろうが」
「はい、そうでした。ガキみたいに拘って、悪かったな。こんな時に!」
「ちょっ…、お二方とも。お止めくだされ」
「お二方って、俺は関係ないだろう。ボーイが独りで盛り上がってるようなもんじゃ」
「どうせ、俺が悪いんだよ!」
「いや、そういうことでは――」
 止めようとした金の戦士――空蝉丸だが、戦う時とは掛け離れた姿で、オロオロしている。しかし、緑の戦士――ソウジは完全にヘソを曲げてしまったようだ。
 すると、“外”から別の声が入ってきた。
「ちょっと、そこぉ。揉めてるようなら、ステゴッチと変わろーよ」
「それなら、ドリケラも一緒でお願い☆」
 キョウリュウジン組の青桃コンビ――ノブハルとアミィだ。
「それ、いいね。そっちがキョウリュウジンウェスタンになれば、いいじゃない」
「ノッさん殿まで、お止めくだされ。話が拗れるだけでござるよTT」
「でも、そっちの二人が揉めてたら、連携に問題ありってことになるじゃない。カミツキ合体は絆が肝心なんだから。ねっ、ノッさん」
「そうだね。僕はアミィと一緒でもノープロブレ〜ムだし。とにかく、一度くらい、ステゴッチをプテライデンオーにカミツカせてあげたいからさ」
「……それ基準、止めようぜ」
 イアンがボソリと呟くが、誰も聞いてくれない。
「じゃ、さっさと合体解いてよ。デーボスも待ってることだし」
「アミィさん。勝手に話、進めないでよ。それにノッさん。言わせてもらうけど、今まで合体がなかったのって、高速移動や飛行可能なプテライデンオーに盾があったって、仕方ないからじゃない」
「グッサァ☆ 痛いトコ突くなぁ。でもさ、そこまで言うなら、こちらも言っちゃうけど、そもそも、ザクトルがカミツく利点って何? 元々、プテライデンオーはプテラカッター持ってるでしょ。それも二本もさ」
「う…、それは」
 他の獣電竜と合体すれば、プテラカッターは使えなくなる。ノブハルの言い分では同じ剣形態なら、合体しなくてもいいことになってしまうが、
「シールドだって、使いようだよ。それに忘れてるようだけど、ステゴッチシールドは五連獣電剣に変型するじゃない。十分、利点はあると思うけどな」
「そ、それなら、パラサガンに離れてもらえば」
「……こら、自然っぽい話の流れで、そっちに持っていくんじゃない」
 獣電竜には夫々、得意な攻撃がある。ステゴッチは防御と剣となれば、近接攻撃だ。その近接攻撃にはザクトル、ドリケラ、アンキドンも含まれる。
 中距離攻撃用にはブンパッキーだろうか。そして、唯一、長距離攻撃の武器となるパラサガンとプテライデンオーの相性がいいのは解る話だ。更にはゼロ距離射撃も可能なのだから、悔しいが、認めないわけにはいかない――それが逆にソウジを余計に意固地にさせてしまった。

「おーい、そこそこ。そろそろ、切り上げてくれよ」
「皆、時間がないぞ」
「相変わらず、カワイイ戦いだ」
「さすがに、そんなことを言ってる場合《とき》ではないと思いますけど」
「オ〜、建設的ナ意見デスネー」
 待機組から、ツッコミが入る。


☆        ★        ☆        ★        ☆


 武装談義はともかくとして、最大最強の敵が、それも複数迫っている事態だというのは間違いがない。正しく、揉めとる場合ではない。
 揉めとる三人に――イアンは既に脱落している。文句を言う気も失せたらしい――最初はオロオロしていた空蝉丸がいきなり、憤然と声を荒げた。
「もう、よいでござる!!」
 その瞬間、全身から光を発したかと思うと、プテライデンオーはプテラゴードンに変型した。
「「うわぁっ!?」」
 当然、両腕を成していた二体の獣電竜はカミツキ合体を解かれてしまう。
「ウ、ウッチー!?」
「たくもー、巻き添えかよ」
 流れで状況を察したイアンはただ、諦めの溜息をつくばかりだが、ソウジは本気で驚かされていた。
 一方、キョウリュウジン組は一瞬、期待したが、
「――トリン! ライデンカミツキ合体でござるっっ!!」
「え? ……は?? 私かっ!?」
 全くの蚊帳の外だったはずの銀の戦士ことトリンが誰よりも仰天したに違いない。
「――ライデンカミツキ合体!!」
 慌てて唱和するトリンだが、何しろ、戦国時代以来の戦友だ。プテラの翼と化したプテラゴードンはあっさりギガントブラギオーの背面に合体した。
「完成! ライデンギガントブラギオー!!」
「……えーと;;;」
 しかし、茫然としているのはトリンも同じだ。獣電竜の合体ではその体幹部を成すガブティラ、プテラゴードン、プレズオン、ブラギガスは互いに腕としての合体はできないので、合体そのものはできないと信じ込んでいた。
 だが、プテラゴードンは翼形態にも成りうるのだった。
「なぁ〜るほど。そーゆー合体もありだなぁ」
 ダイゴが感心したように笑うが、
「ちょっと。酷いよ、ウッチー! いきなり放り出すなんて!?」
「フ…、Oh myだな」
 戦う前から、イアンは疲れ果てているが、若いソウジは憤慨している。二体にはコクピットがないので、外にまで放り出されたのだ。

 それを見たキョウリュウジン組は、
「あぁ。結局、またプテライデンオーと一緒には戦えないのか」
「ノッさん、ファイト☆」
 案外、全く堪えていないようだった。
「ザクトルはどうすりゃいいんだよっ」
「プレズオーと合体すれば、よいでござるよ」
 いかん、普段は仲間たちに対しては鷹揚な空蝉丸が完全に怒っている。
 他方、話を振られたプレズオー組はといえば、別の話に盛り上がり中☆
「プテラゴードンがギガントブラギオーとのライデンカミツキ合体が可能だとすると、もしかして、プレズオーとも」
 研究者魂を刺激されたらしい紫の戦士がブツブツと言っていたが、両脇のスピリットレンジャーたちはダメ出しをする。
「必要あるのか」
「プレズオー、自力デ飛ベマスネー」
「宇宙まで出られるほどのパワーでは大気圏飛行には向かんかもしれんがな」
「空飛ブナラ、プレズオンノママノ方ガイイデショウネ」
「身も蓋もないですTT」
 小柄な弥生が見るからに更に小さく、ションボリとした。

 そんな話を聞いていた、独りスピノダイオーを操る赤の戦士──ダイゴまでが興味を引かれる。
「だったら、キョウリュウジンじゃなくて、ガブティラだけとでも合体できるのかな。プテラゴードン」
「……キング。ガブティラだけじゃ、軽すぎるだろう。プテラのパワーを生かしきれない。それより、盛り上がってるところ、水差すようで悪いんだが、皆、一つ忘れてるぞ」
 「は?」「何々?」「忘れてるって?」等々、仲間たちの間から疑問形連発だが、誰も気付いていないことに、イアンはこれ以上ないくらいに脱力した。「トリン、あんたもかよ」と言いたい。
「これじゃ、一体足りないだろうが」
 夫々のコクピットで顔を見合わせ、同時に「あ」と声を上げた。
「あ、じゃねーよ」
 単独でも戦えるギガントブラギオーに、こちらも人型に成りうるプテラゴードンがくっついたことで、マイナス一体★ 世界各地で暴れているクローンデーボスを迎え撃つのに一体、足りない勘定となる。
「ウッチー、もう文句は言わんから、戻ってくれよ」
 別に俺が文句言ってたわけじゃないけど…、とは心中では呟くに留めた。これ以上、話を拗らせたくはない。
「別に、俺たちがキョウリュウジンウェスタンでも構わないからさ」
「あ…、いや、いいよ。本当にゴメン、ウッチー。こんな時に我が儘言っちゃってさ。こっちはキョウリュウジンのまま頑張るから、そっちも頑張って!!」
 これぞ、大人の姿勢か。トリンは除いて(いやいや、最初から比べるのが違うだろう)の最年長者が引いた上に、「自分が悪かった」発言までしたので、最年少者も気まずくなったようだ。
「俺も、どうかしてたよ。ゴメン、ウッチー」
「空蝉丸、私もその方がいいと思う」
 銀の戦士は内心ではこの姿で、古き戦友と力を合わせて、戦いたいと思っているに違いないが、状況が許さないことも、ちゃんと解っていた。
「……承知したでござる」
 幾分、不承不承の態ではあったが、金の戦士は愛剣を引き抜いた。



 そして、何もなかったかのように? プテライデンオーウェスタンに再び、カミツキ合体した。
「よぉし。それじゃ、仕切り直しと行こうぜ」
 ダイゴの宣言の下、キョウリュウの力を集約した巨人たちは世界各地へと散っていた。
 そんなこんなで、各地のクローンデーボスと激闘を繰り広げるわけだが……、ここはイギリス・ロンドンのプテライデンオーウェスタン対クローンデーボス戦。
「──あそこにドゴルドが」
 因縁深い空蝉丸が気付いたのは当然かもしれないが、次にはこの状況下では意外なことを言った。
「イアン殿、ソウジ殿。この場はお願いできますか」
 何か感じるものがあるのかもしれないが、先刻、ああいう悶着もあったわけだし、「いや、それはちょっと」とか「勘弁してくれよ」とかは口が裂けても、言えなかった。
「解った。任せろ、ウッチー」
「忝い」
 許可を得た──つーても、最初から断られるわけがない形だけのものとしか思えないが、空蝉丸はとっとと、飛び出していってしまった。
「……本当に、任されて良かったわけ?」
「言うな、Boy;;; やるしかないだろうが」
「……でも、メイン・パイロットがいなくても、動かせるもんなんだね」
「キョウリュウジンだって、そうだったろう。キングの代わりに、Boyがメイン張ったこともあったじゃないか」
 それも主の意思があればこそだろう。今も空蝉丸が離れても、その間際にプテラに二人に力を貸すようにと、命じていったはずだ。
 何れにしても、ここは踏ん張るよりなかった。
 ……とはいえ、
「く…。やっぱ、二人じゃ、キツイな」
「でも…、負けて堪るかっっ」
 三人でも手強い敵だというのに、二人で──しかも、メイン・パイロットがいないとなると、更に厳しい戦いとなるのも仕方がない。
 ブレイブフィニッシュもメインの空蝉丸が不在なので、本来の力が発揮できない。どうにも、決め手に欠ける。
「早く戻ってきてくれ、ウッチー」
「泣き言言うなよ。つーか、どうも、その辺にもいないような……」
 ドゴルドを追って、何処まで行ったのやら。……よもや、異空間を抜けて、日本まで戻って行ってしまったとは、さすがに想像もできない二人だった。
「長い戦いになるな」
 チラッとだ、「やっぱり、行かせるんじゃなかった」との考えが掠める二人だった。



 だーから、『そんなこと言ってる場合じゃない』てなものでした。
 一人、冷静なイアンがとことん、損な役回り★ トリンですらが、実は初めてのプテラとの単独合体に浮かれていた、みたいな?
 っても、そのカミツキ合体、本トにできますかね。重量ではまだギガントブラギオー単体の方がキョウリュウジンよりも軽いので、飛ばせられるはずです♪ ただ、あんなにデカい斧持ってるので、飛び回るよりは上空へジャンプしての幹竹割《カラタケワリ》とか、結構、有効だと思いますけど。一度くらい、見てみたいな。
 スピリットレンジャー組も今回、初めて、搭乗☆ 鉄砕・真也さん回でも乗らずに、後ろに引いていたので、スピリットには無理と思ってたんですけど……。次はその辺をいじくってみよーかな、と。

 でも、戦力分散は気になりますよねー。それを考えたのがドゴルドってところも。いよいよ、エンドルフ化が進んでいる感じで、遂にウッチーに全力指摘されました。しかも、ダンテツさん狙いになるとは!?

2014.09.23.
(Pixiv投稿:2013.12.19.)

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