俺たちが悪いわけじゃない デーボスに狙われたクリスマスも、どうにか奪い返すことができた。 キョウリュウジャーたちの贈り物に、世界中の子供たちが顔を輝かせた。
「本当に良かった」 しみじみとした口調の呟きに、先にスピリットベースに戻っていたノブハルは振り向いた。その視線に気付いたか、空蝉丸は満面の笑みを以て、続ける。 「子供たちが、あんなにも明るい笑顔を取り戻せるとは“くりすます”とは実、楽しき祭りでござるな」 「そーよね。何はともあれ、今日のところはハッピー☆ よね」 実際をいえば、敵もまた抱えていた問題やらも見えた上に、強大な怨敵が復活したのを目の当たりにしたのだ。覚悟がいるのは分かっているが、今は過ぎいく“この一日”を楽しむべきだろう。 「拙者、斯様な南蛮の祭を知り、方々とともに祝うことが叶い、誠にラッキー☆ でござる」 「ヤダ、ウッチー。何か、変」 「そうでござるか? ならば、らっきゅー☆ でござる」 すると、ケラケラと大笑いするアミィだった。 明るく笑う二人を傍で見ていたノブハルだったが、軽く溜息をついた。 「ノッさん殿? 如何なされた」 「あー、ノッさん。ちょっと、落ち込んでるのかな。ステゴッチのことで」 「ステゴッチ?」 「うーん。苦戦してるところに、アンキドンが来てくれたじゃない。でさ、ずっとキョウリュウジンで頑張ってたわけだけど、マッチョになったんだよね」 それがどうしたと言うのだろう。 「お陰で、クローンデーボスを倒せたのでござろう。何故《なにゆえ》、落ち込むのでござるか」 「う…ん。ステゴッチも頑張ってくれてたのに、アンキドンの援軍にスッゴく喜んじゃったんだよね。で、直ぐにカミツキ合体しちゃってさ」 落ち込みの原因が見えた気はしたが、それほどの強敵だったことは空蝉丸も知っている。 「いや、それは戦術的選択というものではござらぬか」 「それは分かってるけど、でもねぇ。やっぱ、ステゴッチに悪くってさ」 一緒に戦ったアミィがポンポンと肩を叩いた。 「ステゴッチは怒ったりしないわ。だって、ノッさんの相棒だもの」 「そうでござるな。ノッさん殿と同じく、優しき獣電竜でござるから」 「だから、悪いんじゃない。それにさ……」 もう一つ、さっきよりも深く嘆息すると、 「アンキドンは前にもカミツいてたから、仕方ないけど、まさか、ラミレスにウッチーとのタンデム、先越されるとはね〜★」 「ノッさん殿……。また、その話でござるか?」 話が微妙に逸れた。 「いやぁ、だって、あれは結構、意表突いてたでしょ」 これに関してはアミィも傍らでウンウンと頷いている。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ そもそも、クローンデーボス戦で、スピリットレンジャーたちがプレズオーのコクピットに現れたのも後から考えれば、突然のことだった。 これまでは彼らの“相棒”の獣電竜たちがカミツキ合体をしても、搭乗しなかったし、「スピリットレンジャーだから、無理だ」というようなことを言っていたはずだ。 それは最初に彼らが乗り込んだプレズオーの弥生にも疑問だったようだ。 「お前の祖父のお陰だ」 「お祖父ちゃん…、が何かしたんですか」 弥生の祖父といえば、先代キョウリュウバイオレットで、武器や装備を開発してくれるドクターでもある。 「俺たちの獣電池を改良してくれた。これからは俺たちもお前たちや獣電竜とともに戦える」 あの鉄砕が幾分、声を上擦らせていたのは間違いない。後で、ラミレスが教えてくれた。そのラミレスもまた、同じ気持ちだったのだろう。 その副産物がノブハルの落ち込みだとしたら、笑っていいのか悪いのか……はたまた、気の毒というべきだろうか。 「ノッさん殿」 「ん〜」 「何れ、その…、“たんでむ”も致しましょうぞ」 「ウッチー?」 「そういう“ちゃんす”も必ず、参るでござろう。左様なお顔をなされずに、ホレ、いつものおやじギャクとやらの一つも言って、笑わせてくだされ」 「……ウッチー、それはちょっと、勘弁かな」 「あ、アミィ、酷いっ」 泣き真似をするノブハルに、アミィが口を尖らせる。 「だって、全然、解んないんだもーん。ウッチーだって、本トはどこが面白いかなんて、解ってないでしょ」 「そ、それは〜、そうでござるが」 「何だよー、結局、ウッチーまでTT」 それでも、笑いが弾けた。
少しばかり、離れた所から、彼らを眺める二人――イアンとソウジの周囲は微妙に暗い。 すると、我らがリーダーの素晴らしくも明るい声が降ってくる。 「どーしたんだよ、二人とも。せっかくのクリスマスだぜ。プレゼントも配り終えたし、今度は俺たちで騒ごうぜ☆」 「――いつでも元気だな。お前は」 「騒ぐのもいいけど、傷は大丈夫なの?」 敵に捕まり、かなり痛めつけられた上に、その後も戦ったのが負担になっていないわけがない。しかし、 「大丈夫大丈夫。ウッチーが手当してくれたからな。ウッチーの薬、スッゲー、効くんだな。これが」 あっけらかんと言うのには心配するだけ無駄だったという気にもなりそうだ。「あっそ」と答えつつ、当の空蝉丸を見返すと、目が合った。しかし、ついと逸らされてしまう。何だか、まだ怒っているらしい? 「……納得いかねぇよな」 「そうだよね。ちょっと、割に合わないよね」 二人はノブハルもビックリなほどに、盛大に嘆息する。 「「プテラ、吹っ飛ばしたのはトバスピノで、俺たちが悪いわけじゃないよな〜★」」 「えーと、何があったわけだ」 何がも何も、空蝉丸がドゴルドを追っていってしまった後も、プテライデンオーウェスタンで、クローンデーボスと戦っていたイアンとソウジだったが、持久戦に陥ってしまっていた。そこに、援軍に現れたのがトバスピノだった──のだが、最初の獣電竜だからなのかどうか、こいつの得意技は何といっても、禁断の!?“強制カミツキ合体”だったりする。 ブーメラン攻撃で、プテライデンオーウェスタンの窮地を救った後、「助かったー」と二人が思う間もなく、奴は突っ込んできた!! んでもって、ウェスタンの合体を強制的に解除し、スピノダイオーウェスタンになってしまったのだ。当然、プテラゴードンは放り出された形になり、その上空を旋回していたのが何とも物悲しい。 とはいえ、二人にしても混乱している暇も慌てている場合でもなかった。一気呵成に攻めにかかり、吹っ飛ばされたプテラゴードンの雷撃の援護も受け、クローンデーボスを打ち破ることが叶ったのだ。 敵を前にしては、結構、理不尽な目に遭っても、援護してくれたプテラゴードンだったが、戦闘後には抗議(多分;;; いや、十分に気持ちは解るよ)も忘れなかったようだ。「何してくれる」とでも言いたげに、スピノダイオーウェスタンの頭を嘴で突いたものだった。 その辺の成り行きを、空蝉丸が知ってしまったらしく、またしても、お冠に★ クリスマス気分で戻ってきても、何だか、口もきいてくれない始末だった。
簡単に説明すると、ダイゴに笑われた。何つーか、壮絶に腹立たしい限りだ。 「気にすんなよ。お前らが全力で戦ったことは、ウッチーだって、本当はちゃーんと解ってるはずだぜ。そう思わないか」 「それは……」 「でも、まっ。“相棒”の側に立てば、暫くはあんな感じかもなー。二人とも、ガンバれよー」 ステゴッチに悪いと気を落とすノブハルのことは慰めていたのに、同じような状況にも関わらず、“相棒”たるプテラゴードンのこととなると、話は別とばかりに厳しくなる“雷鳴の勇者”らしいからして。 「キング〜〜★」 「人事だと思って……」 戦闘中から既に文句を言う気力など、消し飛んでいたようなものだ。ここに至り、欠片すら磨耗する勢いだった。
さておきの『タンデム』三話目です。よもや、クリスマス回後編で、プテライデンオーウェスタンがスピノダイオーに取って代わられるという、オイシい事態が起こるとは!? これは続きを書けと言われているよーなもんでしょうと。 プテラがスビノダイオーの肩に止まって、ゴンゴン突いたのが可愛くて、もー☆ あれが「テメー、何さらす」てな抗議だったのか、キョウリュウジャーたちがよくやるハイタッチ的な行為だったのかは不明ですがね。後者でも面白いけど。
それにもまして、衝撃だったのはプテライデンオーアンキドン♪ いや、衝撃だったのはノッさんだったのかもしれんけど^^;;; まさかのスピリットレンジャーに先越されました★ 2014.10.10. (Pixiv投稿:2013.01.02.)
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