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 『聖闘士星矢〜バレンタイン篇』 お礼SS No.12
 二月──アテナのお供で、日本から帰ってきたアイオロスはやけに上機嫌だった。妙にウキウキしている。この男の(超限定的)奇行は今に始まったことではないが、さすがに今回は、聖衣もなしで、空の彼方にまで飛び立っていってしまいそうなほどに浮ついているのにで、慣れている仲間たちも遠巻きにするばかりだ。気味が悪くて、近寄る気にならない。
 「何なんだ、あいつは。遂に頭に花が咲いたか。虫でも湧いたか」
 「そろそろ、梅の季節ですからねぇ。……日本では」
 「あー、ありゃ、バレンタインのせいだ」
 サラリと言うミロをサガとカミュは注視する。カミュの方はそれで納得したようだ。「なるほど」と頷いている。だが、サガは首を傾げるばかりだ。
 「聖バレンタインを祝う日か? それがどうした。あいつはいつから、クリスチャンになったんだ」
 「あ、それカンケーないから。バレンタイン・デーっても、日本で仕入れた知識だし。日本版バレンタインね」
 「つまり、宗教色の全くない奴だな」
 これはカミュ。さすがに弟子が日本人というだけはある。
 「何せ、クリスマスから一週間も経たん内に、門松立てるようなお国柄だかんな」
 ……いや、最近は門松立てる家は少ないよ。しかし、意外とよく知ってんな、ミロ。
  サガも少しは興味を惹かれたらしい。「日本版とは、どういうものなのだ」
 「彼女が意中の彼氏に愛をこめて、チョコを贈るのさ」
 「チョコ? 何でまた──」
 「そういうことは考えないでいーの」
 「…………で、アイオロスが何故? 誰かから貰える当てでもあるのか」
 ミロとカミュは顔を見合わせた。この辺、やっぱりサガも一本、ズレているかもしれない。
 「ちゃうちゃう。アイオロスはやる方! 決まってんだろう」
 「しかし、女が男に贈る日なのだろう。それでは──」
 「サガ。愛をこめて、とか、最愛の、とか聞いた時点で、何も聞こえなくなりますよ。アイオロスは」
 「そゆこと。そんな素晴らしいイベントがあるなら、最愛の誰かさんに是非とも、手作りチョコを──あ、手作りってのがポイント高いからね。と、一気に突っ走っちゃうだろうが」
 「最愛の……まさか」
 「まさか、ではないでしょう」
 「他にはあり得んよな」
 ここにはいない生真面目な獅子座の黄金聖闘士を思い起こし、三人三様に溜息をついた。多分、彼はまだ何も知らない。
 「で、チョコを作るつもりなのか。あの馬鹿は」「帰ってくるなり、デスマスクがトッ捕まってたからなぁ」
 「大特訓中というところでしょうね」
 「……デスマスクも気の毒な」
 復活した英雄殿は何だか、昔とは違って、ホトホト傍迷惑な奴になっていた^^;
 サガはもう一度、盛大に嘆息し、頭を振った。
 「釘を刺した方が良いのでは──」
 「無理でしょう。アテナが乗り気ですから」
 「何、アテナが?」
 「一緒に作っているらしいですよ」
 「誰にやるのかなー。本命チョコ」
 「本命?」
 何となく、ニュアンスは解る。
 「あ、本命の他に、義理チョコってのもあるから。俺たちも多分、義理くらいは貰えるんじゃん?」
 そちらは手作りではないだろうが、何つっても、女神沙織はグラード財団の総帥様だ。義理チョコの方が無難な既製品チョコ──しかも、高級品☆を期待できるかもしれない。
 「ミロ、妙に楽しそうだな」
 「そりゃあね」
 今は仲良く、チョコ作り特訓中の二人──もしかしたら、その当日はライバル?になるかもしれないのだから。
  運命の日まで、後数日…^^; 
  
 
 『聖闘士星矢〜ホワイト・デー篇』 お礼SS No.15
  三月半ば。北半球は程度はあれ、何処もそろそろ、春の気配が漂い始めている。そう、ここにも一人──春違いかもしれんが;;; 「兄さん、先月はチョコをありがとう。それも手作りだなんて……凄く嬉しかった」「アイオリア! そぉかぁ〜、兄さんの気持ち(どんな気持ちや)解ってくれたんだなぁ〜〜」
 「これ、お返しだよ」
 「お返しだなんて、気にしなくていいんだぞ。リアがいてくれるだけで……。でも、やっぱり嬉しいけど^^ ありがと、リア」
 「兄さん、これからもずっと一緒だよね」
 「勿論! 当然♪ 当ったり前☆ ずうっとずうぅ〜っと一緒だ」
 ひっしと抱き合う兄弟。
 〈あぁ、リアが可愛いのはいつものこと(!?)だけど、こんなに素直だなんて。もしかして、夢じゃないかしらん〉
 幸せいっぱいなくせに、妙に現実的なのが笑える。
  そう、現実はこんなん↓  締まりの全くない顔で、聖域の英雄殿は気持ち良さそうにお昼寝の真最中☆「う〜ん、リアァ〜☆ ムニャムニャ」
 「…………起こさなくて、良いのか」
 「ほっとけ。どーせ、夢の中だけでしか享受できん幸せだ」
 「お優しいこって」
 「今は執務中なのだが?」
 「……ここで起こすと、多分、暴れるぞ」
 「超不機嫌になるな」
 最愛の誰かさんとの語らいを邪魔したとか何とか──夢だけどね^^;
 「考えようによっちゃ、淋しいよなぁ」
 居合わせた者は夫々に溜息をついた。
 その頃のアテナ神殿。登殿したサガは女神沙織が妙にウキウキしているのに、首を傾げた。いや、この浮かれ模様は何だか、誰かさんを髣髴させる。
 「まっ、まさか、アテナまで、頭に何か咲いたんじゃ」
 「そろそろ、桜の季節ですからねぇ」
 それはともかく、アテナが何を想像しているのか──まぁ、戦女神様とはいえ、うら若き乙女でもあるのだから、その心の内に踏み込もうなんてな無体な真似は避けるべきだろう。
 そして、その頃の獅子座の黄金聖闘士はといえば、
 「なぁ、ミロ。ばれんたいん・でーって、何だ?」
 「はひ???」
 余りの問いに、ポテッと手にしていたペンを落としてしまった。
 何か、片言だったけど「バレンタイン・デー」と言ったのか、こいつは。何を今更。もう一月も経とうとゆーのに。つーか、そろそろお返しの日も迫っているとゆーに……。
  これが現実。夢の実現は前途多難な模様☆ 
  
 
 『聖闘士星矢・エイプリルフール篇』 お礼SS No.18
 この日、聖域の英雄殿はまたまた奇妙な行動に走っていた;;;
 「リア〜♪」「何だ、兄さん?」
 「え゛、いや…、あのぉ、リア?」
 「だから、何?」
 「──えっとー、何か用は」
 「ないよ」
 ドきっぱりと言い切ると、兄は少しばかり傷付いた顔で、首を捻りながら、出て行った。
 首を捻りたいのはアイオリアの方だ──その後も、一時間置くらいに現れるのだ。何の目的があるわけでもなく……。いい加減、ウザい★
 「い、いや。だって、デスマスクがアイオリアが呼んでるぞって、伝言を」「兄さん…。用があるなら、テレパシーを使うか、小宇宙を直接、飛ばすよ」
 呆れたように言うと、兄は面食らった顔をしたものだ。
 「デスマスク! 何だ、アイオリアが俺を呼んでるなんて、嘘っ八じゃないかっ」
 「ハハハッ、でも、色々想像して、楽しかったろ? ウキウキしてたじゃんか」
 「んだとー」
 「そんなに怒るなよ。今日はエイプリルフールなんだからさ」
 口を挟んだミロも、アイオロスを引っかけた一人だが。
 「しっかし、同じ嘘に引っかかるとは……。アイオリアの反応で解りそうなものだが」
 「無理、だな」
 外野の意見など、耳に入るわけもない。アイオロスの興味は『エイプリルフール』だ。
 「四月バカ? 何だ、それは」
 あんたそのもの──とは誰も言わない。アイオロスの兄馬鹿は年中無休だ。
 「なるほど、ジョークで人を楽しませるってことか」
 嘘といっても可愛いものだ。相手を楽しませるような冗談の類だろう。
 「そ、そっか。よし、ここは一つ、とびきりのジョークで、いっつも顰めっ面のアイオリアを笑わせてやろう♪」
 やっぱり、そうなるか。居合わせた者が苦笑したのはいうまでもない。
 「全く…、他に選択肢はないのか」
 「あり得ん」
  ところが、暫くウンウン考えていたが──何だか、苦悶を始めたのだ。「どうしたのだ、あいつは」
 「さぁ?」
 「ダメだーっ」
 いきなり頭抱えて、絶叫したのには全員、身構えてしまう。
 「な、何だぁ」
 「ダメだ…。幾らジョークでも、嘘は嘘。生真面目で可愛い(←さり気なく?主張^^)アイオリアを騙すなんてーーッッ!!」
 全員、一気に脱力したのもいうまでもない。
  果たして、アイオロスはジレンマを乗り越え、アイオリアをクスリとでも笑わせることができるのだろうか☆ 
 
 『星矢拍手三部作第二弾』 期間限定作品群でした。
 とにかく、年中無休な兄馬鹿ぶり炸裂☆ ちょい出な女神様までが何だかおかしい。すっかり、拍手は平和=おバカな話に落ち着きました^^;;;
 2008.04.14.   
 
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