『聖闘士星矢 お花見は終わったよ篇』 お礼SS No.80
「なぁ、リア。また、日本に行かないか」 「日本に? 任務でなくてか」 「緑の桜並木も、花とは違った趣で綺麗だそうだ。ムウが知らせてきた」 牡羊様御一行の慰安旅行も、そろそろ終わりを迎える。近く戻るとの報せがあったようだ。 「任務じゃないんじゃ、そうそう、聖域を離れられないだろう。特に兄さんは教皇補佐なんだから」 「補佐なら、サガもいるし」 とんでもない言い草に、アイオリアは嘆息する。これだから、サガの心労も治まることがないのだ。 「また、そうやって、サガに押し付けようとする。シオン様もまだ、お戻りでないんだから、駄目だよ」 「じゃあ、お戻りになられたら……」 「兄さん。我がまま、言うなよ」 「我がままとは何だ。俺はただ──」 諦めの悪い兄は食い下がる。 さて、兄の次なる野望?は果たされるかどうか。
『星矢・GW?篇』 お礼SS No.81
「黄金週間《ゴールデンウィーク》か……。うん、良い響きだな。正しく、我々のためにあるもののように思えないか」 能天気男の能天気な物言いに返ってきたのは地を這うようなドスのきいた声だった。 「喧しいわ。幾ら、暖かくなったからといって、脳ミソをふやかしすぎだわ、馬鹿者。とっとと仕事しろ」 「いかんなぁ、サガ。いつもの優雅さに欠けるぞ。もっと大らかに鷹揚に、心穏やかな気持ちで、日々を過ごさないと──禿げるぞ」 「アナザー・ディメンション!!」 「どわーっと」 閑話休題☆ 「全くもー。危ないなぁ。こんな狭い部屋で、いきなり撃つなよ」 どうやら、怒り心頭でありすぎたためか、不発だったようだ。 サガは無視が一番と決め込んだか、黙々と書類を捌いている。凄まじい集中力だ。 だが、集中しきれない男が一人……。 「なぁ、サガ。なぁなぁ、サガってば」 「いい加減に仕事を進めろっ。お前に付き合っての残業なぞ、絶対にゴメンだっっ」 「怒るなって。仕事漬けで疲れてるんじゃないか、サガ。ここは一つ、やはり、聖域にもゴールデンウィークを」 「それが何だっ!! 先代の天皇の生誕日がいつだろうと、日本の憲法がいつ制定実施されようと、いつお子様の成長を祝おうと、聖域に何の関係があるかっ!!?」 「いや、関係ないから、聖域流のゴールデンウィークをさ。どう?」 「どう、じゃねぇわっ!! ギャラクシアン・エクスプロージョン!!!」 当然、執務室が吹っ飛んだ。 「あーぁ、また執務室を再建しなければなりませんね」 「もう、あの二人は隔離した別の宮を作った方がいいんじゃないか? 教皇宮ではなく」 「そうですねぇ」 「にしても、あれで時間を更にロスしているというのに、何だって、兄さんは同じことを繰り返すんだろう」 丁度、白羊宮を通りかかった時に、上の状況を察し、溜息をつくアイオリアにムウが苦笑する。 「アイオロスなりに、サガに鬱憤晴らしをさせている……とか?」 「他に余計なものを溜めさせている気もするがな。サガが兄さんを本格的にぶちのめしたくなっても、俺は兄さんには加勢しないぞ」 「怖いですねぇ。あー、それとなく、そのことをアイオロスに伝えるのも一手ですね。貴方が味方にならないと知ったら、少しはやり方を改めるかもしれません」 「泣きつかれるのがオチ、じゃないか」 「あり得ますね」 それでも、そんなに大事になるとは思っていないのか、苦笑し合って、二人は別れた。 ある意味では、それもまた、平和の証なのかもしれなかった。
『聖闘士星矢 with クリマイ』 お礼SS No.82
ドアを開けた瞬間、俺は動きを止めた。既に見慣れた感もある光景に、少しばかり溜息をつく。 「あ、ロー捜査官」 俺の思い過ごしでもなく、嬉しそうに言うのもいつものことだ。 「ドクター、また、来てたのか」 「あー。また、そういう言い方をするんだから。そんなにお邪魔ですか」 口を尖らせたのはドクター・リード。以前に、協力してもらった事は確かにあるが……。 「そうじゃないが……。ホッチナーは知っているのか」 「休みに何処に行くかなんてことまで、一々、報告しなきゃいけないってことはありませんよ」 おや? 少しだけだが、反抗してくる。わりかし、ストレートに好意を示すドクターにしては妙な感じだ。 デスクに持っていたファイルを置きながらも、肩を竦め、受け流す。 「そりゃ、クワンティコ近辺でなら、何処で何してようと構わないがさ。此処はニューヨークだぞ。事件が発生して、招集がかかっても、すぐには帰れないだろう」 「その時はその時です」 「そうだぞ、リア。折角、ドクターが知恵を貸してくれるって言うんだから、御厚意には甘えておけよ」 口を挟んだのは勿論、相棒だ。ノンビリとした言い様に、もう一つ嘆息する。あんたは楽したがりってだけだろうが。 「で、休みって、いつまで?」 この前は午後の半休に飛んできたことがあった。変なところで意外な行動力があるが、無茶苦茶だ。当然、大した時間は此処にはいられなかった。 「えーと、二時まではいられます」 朝の内に、こちらにまで来て──何だか知らんが、どうもここはドクターの避難場所の一つになりかけているようだった。 頭脳明晰なプロファイラー。生きた百科事典とも呼ばれる年若いドクター。 だが、どこか……酷く危うい。 その危うさに、どう対すればいいのか──護ってやるべきなのか、放っておいて、打たれ強くさせてやるべきなのか。日頃、接点のない俺には判断しかねる。 たまにドクターが押しかけてくることを、勿論、ドクターの上司たる同期には知らせてあるが、一々、毎回、報告しているわけじゃない。 ただ、押しかけたら、普通に相手をしてやってくれとしか、言われていない。 「で、今、担当している事件は? また、X−FILEな事件ですか」 「あのね。そうそう、そういう事件はないよ。……全くないってわけじゃないだけでね」 「みたいですね。残念」 残念って…。プロファイラーがこんなに超自然的なもんに関心を持つなんて、思わなかったな。 そのドクターは、相棒とファイルを覗き込み、意見を説明し始めていた。
『星矢拍手纏め』 短い『お花見篇』は『アリエス・パーティ参加作品』の後日談で、記念すべき80本目の拍手☆ 『星影 with クリマイ』その後。天才だけど、若すぎて、能力と感情を持て余すようなこところもあるドクター・リード。結構、余り知らない大人?に懐きそうな感じがします^^
2008.07.31. |