『期間限定・星矢☆ばれんたいんでい』 お礼SS No.97
正しく、夢の如き一瞬だった。 「ア…、アイオリア。これはっ……!?」 「あぁ、兄さん。実は──」 「チョッ、チョコかっ? リアッ、バレンタインのチョコなのかっっっ」 震える手には可愛いパッケージの箱が──その現実に、言葉までもが震えていく。 「え? あぁ、うん。そうだ。それはな」 「あぁ…! 夢ではないのか。リアがこの俺にチョコを……。それなら、醒めないでくれっ。そうだ、サガ。ちょっと、ツネってみてくれないか」 「阿呆。付き合ってられるか」 切り捨てつつも、意外そうにアイオリアを見返すサガだ。よもや、アイオリアがアイオロスにチョコを贈るなぞ、想像できなかったことだ。逆ならば、ともかく。
「こうしてはおれん! リア、俺もちゃんと、お前へのチョコを用意してあるぞ。一寸、待っててくれ」 「え、兄さん?」 「こいつは暫く、飾っておくかな〜☆」 暫くどころか、一生、食わんかもしれんな、と誰もが苦笑したものだ。 ともかく、舞い上がった射手座の黄金聖闘士は文字通り、ルンルンとスキップしながら、教皇宮を出て行ったのだ。直ぐに、アイオリアへのチョコを手に戻ってくるだろうが。 多分、行き会った者たちに、聞かれもしないのに、得意そうに「アイオリアから貰った」とか言い触らすことだろう……。 それにしても、何故、この類のイベント事には興味を見せないアイオリアが? サガにはどうにも疑問が湧き、尋ねてみた。 「アイオリア、あれは本当にチョコなのか」 「ん? そうだが」 それがどうかしたか、とでも言いたげな表情だ。このイベントをちゃんと理解しているのか、どうも怪しい。 「何故、アイオロスなどに」 「何故も何も、アテナからお預かりしたのだが」 「……アテナ??」 「あぁ、当日は聖域には来られないから、代わりに渡してくれと。そうだ。サガにも預かっているぞ」 今まで、何故に意識が向かなかったのか──デカいバックを携えているではないか。中から、アイオロスに渡したのと同じパッケージの包みを取り出し、差し出してきたのだ。 「…………アテナから、なのか?」 「そうだ」 「………………さっきのアレも??」 「勿論。兄さんにも、ちゃんと教えないとな」 ……何て、オチだよ。サガは溜息をつくばかりだ。思い込みから、感激しまくっている射手座の男が真実を知るのはいつのことか。 「どうした、サガ」 「いや、アイオリア。暫く、そのことは、あいつには話すな」 「何故だ? ちゃんと、アテナからの贈り物だと」 「何故でもだ」 事実を知ったら、衝撃の余りにボケラ〜★ と魂を飛ばして、使い物にならなくなるのも疑いない。あれでも、いなくなればなったで、困るのだ。 「いいか、絶対に言うなよ」 「わ、解かった」 首を捻るアイオリアは預かっている他のチョコを皆に配ると言って、兄を待たずに出て行った。 「それにしても、こんなイベントが流行るとはな」 何せ、アテナが率先して、盛り上げているのだから──これもまた、平和の証と思えば、笑って済ませるものなのだろろう。 「リア〜☆ 持ってきたぞー」 アテナに次いで、盛り上がっている誰かさんの声が響き渡った。
『聖闘士星矢・えいぷりる・ふーるダヨ』 お礼SS No.99
「いい加減にしてくれよ、兄さん!!」 春の気配も愈々、強まってきた聖域に、いつものような叱責が響き渡る。獅子座のアイオリアが兄、射手座のアイオロスを叱りつけるのは──立場が逆のような気も疾っくに失せた感ではあるが──日常茶飯事のものとなっている。 何とも言いようのない複雑な気分にさせられる聖域の人々だが、今となってはアイオリアに対する同情心がより強いかもしれない。
──本ト、大変な兄を持ったものだと…… 例の十三年間を含めての感慨であることは言うまでもない。 さておき、今回は一体、何をしでかしたのか? 弟がまたもや、立腹しているのに、その兄はノホホ〜ンと呑気に構えている。そうして、決定的な台詞が、 「もう知らん! 兄さんの後始末ばかり、させられるのは俺の務めではないぞっ。これからは自分で何とかしてくれ」 「い? そんなー。ちょっ、ちょっと、待ってくれ。リア〜TT」 「う・る・さ・い。金輪際、話しかけないでくれ。兄弟の縁も切るぞっ」 グワワァァ〜〜ン★ さすがに縁切りなどという物騒な捨て台詞に大ショックを受け、アイオロスは固まった。フリーズしている間に怒った弟は何処ぞ(アイオロス主観・仕事に戻っただけ)へと行ってしまった。 数十瞬ほど遅れて、我に返った兄は蒼白になり、アタフタとし始める。 「リ、リア〜、ちょっ…、縁切るなんて、嘘だろーっっ!!」 バタバタとしていたが、そこでハタッ☆と、いらんことに気付いたのだ。 「いや、待てよ。今日は四月一日……。何だ、エイプリル・フールじゃないか♪ リアの奴、俺を驚かそうと、こんなお茶目な嘘を」 お茶目って…。仲間たちは嘆息したものだ。どこまで、オメデタイ思考をしているんだか。絶対、偶然だ。アイオリアにそんな意図があったなんて、考えられない。 だが、オメデタイ兄はニコニコ笑っている。 「そうかそうか。お堅いあいつも、少しは楽しいイベントに自ら参加する気になったか。良い傾向だ。おーし、俺もお返しをしてやろーっと」 スキップしながら、弟を探しにいくアイオロス……。その運命を思うと、嘆息だけでは済まない気分になる一同だった。
『聖闘士星矢・101は因んでみました篇』 お礼SS No.101
「ボクは死にましぇ〜ん!」 日本から帰ったばかりのアイオロスが弟、アイオリアの前に立ったかと思うと、いきなり、そんなことを叫んだ。 きっちり、日本語を解する黄金聖闘士たちだが、といって、その台詞が何なのかを直ぐに理解した者は少なかった。当然、 「何だ、あいつは。妙なことを口走りおって」 「止せ。どうせ、虫でも湧いたんだろう。頭にな」 などと、あんまりな反応ばかりが寄せられることに、当のアイオロスは全く頓着していない。彼にとって、最早、アイオリア以外は有象無象の如く、どんな反応をされようと痛くも痒くもない。 尤も、そんな唯一無二の弟がして、微妙な表情で引きまくっているのだが。
「何だよ、兄さん。いきなり」 やはり、頭に虫が湧いたかと、些か心配そうでもある。 「いやぁ、アイオリア。『101回目のプロポーズ』は良い話だなぁ」 「はぁ?」 「もう止まらなくてな。全話、一気見してしまったよ。ボクは死にましぇ〜ん!」 それで、何人かは納得した。日本の昔のドラマだ。聖域では詳しく知る者は数少ないが、一世を風靡したドラマなのだ。 「金八さんのひたむきさが良いんだよ」 「ちょっと、兄さん。金八先生は別のドラマだろう」 聞いていた面々はヒソヒソと、 「意外だな。アイオリアの奴、何で『金八先生』を知ってんだ」 「あぁ、先日、丁度、日本に行っていた時に最終回SPを放送していましたから。星矢たちと一緒に見届けましたよ。彼の金八先生が定年を迎えるまでを」 かく言うムウも一緒だったようだ。 「何十年に渡り、一つの物語を貫き、ドラマの中で定年となり、数多くの教え子たちに送られていく……。それまで、送り出してきた教え子たちに。素晴らしいことですよね」 これまた、意外なことに、ムウも『金八先生』を気に入っているらしい。 さておきの兄弟たちは、 「細かいことを気にするな、リア。金八さん=タケダテツヤ氏だと思え。ボクは死にましぇ〜ん! んー、名言だな。リア、俺もお前に誓うぞ。オレは死にましぇ〜ん!」 「…………」 十三年前に、ちょーっとばかし放り出されてしまった弟は無言を通すのみだった。
『星矢拍手三部作第十五弾』 纏めるのが遅れたら、二月のが残ってたのが発覚;;; その『ばれんたいんネタ』はもうネタ切れで、寸前で湧きました。『えいぷりるふーるネタ』は記念すべき拍手99本目でした。よく書いてきたもんだ☆ そして、101本目は100が因めなかったので、数絡みに。『金八先生』には何気にホッチ&ジョーカー声の森田さんもずっと出演。昔は超クールで、言葉攻めの天才でした^^;;;
2011.07.01. |