『聖闘士星矢 with キョウリュウジャーで 獅子誕?』 お礼SS No.166
再び、暑い季節が廻ってきた──即ち、太陽の季節だ。 汗を拭いながら、アイオリアは空を見上げた。突き抜けるような真青な空に白い雲が浮かんでいる。 「アイオリアー」 慣れ親しんだ若々しい小宇宙が近付いてきているのには気付いていた。だが、それは一つだけだった。 「星矢、一人なのか」 「あぁ、皆は明日、来るってさ。俺はムウにくっ付いてきた」 日本から帰るムウに同行したということか。しかし、何故、一足早くやってきたのか。確かに向こうは今は夏休みだろうが。 「へへ、アイオリアに渡したいモンがあってさ。まっ、早めの誕生日プレゼントって感じかな」 「そんなに気を遣わなくてもいいんだぞ。小遣いがなくなるぞ」 苦笑いで応えると、星矢は結構、大きな包みを差し出した。 「いいって。アイオリアには世話になりっ放しだしさ。で、これなんだけど、アイオリアにピッタリだと思うんだよね」 「あ、じゃあ、開けてもいいか」 そうして、出てきた箱に、アイオリアは何を言うべきか、大いに困惑した。パッケージには何やら、装身具のような意匠が描かれている。見た目、武器のようにも見えるが、よもや、日本で本物を手に入れられるわけはあるまい。 「何だ、これは?」 「うん、がぶりチェンジャーとぷてらごーどんの充電池」 「…………はい??」 解説が片言でしか耳に入ってこなかった。因みに正確には『ガブリチェンジャーとプテラゴードンの獣電池』だったりする☆ 「何だって?」 「だーから、がぶりチェンジャーとぷてらごーどんの充電池だよ。キョーリューゴールドの」 繰り返されても、一部しか単語変換できないが、『なんとかゴールド』は獅子座の黄金聖闘士たるアイオリアにも理解できる。しかし、『キョーリュー』とは何ぞや? その答えは 「今年のスーパー戦隊の追加戦士なんだよ。元は戦国時代の剣士で雷鳴の勇者☆」 「ライメイ……」 「そ、雷使いなんだよ。アイオリアと同じ♪ これがまた、カックいい剣士なんだよなー」 「……星矢、聖闘士たる者、武器を使う者に憧れるというのはどうかと思うぞ」 「堅いこと言うなってば。心構えが格好良いんだよ。そのくせ、ちょっと天然でさ」 星矢が憧れ、尊敬している剣士がいるというのは解ったが、解らないことはもう一つ。 「大体、そのスーパー戦隊とは何なんだ。日本にはそのような部隊もあるのか。初耳だな」 「う〜ん、いや、戦隊っても、TVなんだけどね」 そこで、アイオリアはまた苦笑した。何のことはない。現実の話ではないのだ。もっとも、自分たち聖闘士を扱ったオリジナル・アニメまで、制作されているくらいだ。ジャパニメーションを始めたとしたドラマの質の高さには驚くほどだった。 「あぁ、ショッカーと戦う奴か」 「それは仮面ライダー! 何だ、特撮も知ってるんじゃん」 「いや、兄さんがちょっと……」 弟にとっても、愈々、謎めいた趣味人になってきた聖域の英雄は置いといて、 「スーパー戦隊の敵は人間の秘密結社や宇宙人や、異次元の敵だったり、ユーレーだったりって、バリエーション豊富なんだよ。で、今年は恐竜の力を使える戦隊で、敵は恐竜を滅ぼしたっていわれる最凶の敵」 「…………その時点で、負けてないか?」 しかも、恐竜とは──神々の時代より古いのか、新しいのか──どう判断すべきだろうかとアイオリアは軽く悩んだものだ。 それはともかくの星矢の土産だかプレゼントの前渡しだかは、要するにお子様向けの玩具なワケだ。もっとも、玩具にしては素晴らしい出来だ。日本は玩具に関しても、その域を超えている。いやいや、それも別のことだ。 聖闘士──それも筆頭の黄金聖闘士たるアイオリアにこういうものを贈る真意とは果たして……。 などと、ついつい深読みしかけて、アイオリアは考えすぎだと笑った。何しろ、星矢のやることではないか。 「ね、ちょっと、着けてみてよ」 「あぁっ? これをか」 「一回でもいいからさ」 「…………解ったよ」 大きな目をキラキラさせて、見上げてくる弟分のお願いモードにはどうにも弱い。 「そうそう。で、ここを押して開いて、獣電池装填。ブレイブ・イン☆」 ガブリンチョ☆ プテラゴ〜ドン♪ と音声が流れ、さすがに驚く。懲り過ぎだろう! 本当に子供の玩具か? 「ブレイブってのは俺たちの小宇宙みたいなもんだよ。で、ここで決め台詞。“いざ、尋常にキョウリュウチェンジ”」 「それを俺に言えというのか」 「いいじゃん、一回でいいからさー」 「〜〜〜〜」 十二宮に、何とも平和なやり取りが続いた。 おまけ 「でもって、変身したら、名乗りで、もう一つ決めるんだよ。“天怒りて悪を斬る!”」 「いい加減、勘弁しろ」
『星矢・獅子誕後日談 with キョウリュウジャー』 お礼SS No.167
「リアー、アイオリア〜。今、帰ったぞー。いないのかぁ!?」 十二宮の静けさを破る騒々しい呼びかけに、アイオリアは一つ溜息をつく。 帰ってきたことは当然、小宇宙で察知している。それは向こうも同じはずだから、「いないのか」などという問いは全くの無駄だ。要するに、「顔を見せろ」ということに他ならないわけだが、毎度毎度、「お疲れ様」と言いたくなる。 兄アイオロスはこちらが不在でない限り、必ず獅子宮に立ち寄るのだ。 全く、外から帰ってきたのなら、即刻、教皇宮に上がるべきだろうに──既にシオン様やサガですらが諦めているらしい。 頻繁に顔を出す兄は、未だに自分が世話の必要な幼い弟にでも見えているのだろうか? だとしたら、目医者にでも行けと言いたいところだ。 ともかく、顔を出さないことには兄は先に進みそうにないのだ。 そうして、顔を合わせれば、兄は満面の笑みを浮かべた。いつもならば、そのまま直進し、ハグしてくる――が、今回は違った。 両手に抱えた荷物のために、不可能になっていた。もっとも、アイオリアはそれが何かなどとは考えなかったが。 「ただいま、リア」 「……お帰り、兄さん。ところで、いつも言っているが、まずは教皇宮に上がって――」 「お前の顔を見たらな☆ 長居するわけじゃないだろうが。冷たいな」 いつものやり取り――誰が諦めても、アイオリアだけは毎回、しつこく苦言を呈した。それでも、改めないのだから、さすがにイイ根性をしている。 「それに今日はお土産があるから、渡しときたくてな」 これも珍しいことではない。苦労させた詫び…、とか思っているのか、色々と出先からチョットした土産を持ってくるのだ。 大抵は食えばなくなる食い物だが、時々正体《わけ》の判らん民芸品などがツボだったらしく、実に嬉しそうに渡される。ただし、正直、置き場に困る代物も多い……。 その極めつけはアイオロスではなく、先日、星矢に貰ったものだが、一応は誕生日プレゼントともなれば、始末するわけにもいかない。 「で、何なんだ、兄さん」 とまれ、さっさと済ませて、教皇宮に追い立てなければ、シオン様にも申し訳ない。 が、当の兄は案じる弟の心も知らぬように、荷物を近くのテーブルに置いた。 「いやぁ、同好の士がいるのは嬉しいもんだなぁ」 「何の話だ」 「お前、星矢から貰ったんだろう? ア・レ♪」 「……」 かなり、イヤァな予感がしてきた。 「これはシリーズものみたいなもんだからな。やはり、三つ揃ってないとな」 ブツブツと一人で納得しているが、胸騒ぎは愈々、大きくなる。 土産と言いつつ、自分で開けてしまうのだから、一人で楽しんでいるとしか言いようがない。 その上、案の定というべきか、派手派手な箱が現れた。それもチョットしたデ・ジャヴか。しかも、二個もあるではないか!? 「…………それ」 「うん。キョウリュウゴールドのモバックルとザンダーサンダーだ。やっぱ、ガブリチェンジャーだけじゃなぁ。そうそう、ゴールドの装備は他のキョウリュウジャーとは違って、専用なんだぞ☆」 「兄さん……」 モバックルはベルトに装着し、通信装置でもあると、説明する。ザンダーサンダーは一応、長剣だろうが、勿論、普通の剣とは意匠がまるで違う。 そういえば、星矢がキョウリュウゴールドは戦国時代の剣士だと言っていたが、アイオリアの知る限りでの、日本の時代劇仕様の刀とは随分、違う。……マジにクラクラしてきた。 「これで君も雷鳴の勇者だ! なんてな☆ ほら、リア、持ってみろ。あ、ガブリチェンジャーも装着《つ》けて――獣電池は最初はモバックルに入れとくんだ。さ、星矢にやってみせたように、俺にも見せてくれ」 無論、アイオリアは微動だにしなかった。 「リア? どうしたんだ。ほら、早く早く」 期待満々の満面の笑顔で、覗き込んでくるアイオロスに、アイオリアは押し黙るよりない。 教皇宮への報告もしないで、何を遊んでいるのかと、さすがに腹に据えかねるものが湧いてくる。まともに付き合う必要があるだろうか。いや、あるまい! 「そう…。そんなに見てみたいのか、ライメイの勇者」 「うんうん。じゃあ、これ着けて――あれ、リア? どした??」 「それじゃあ、目一杯、楽しんで、味わってくれ」 にっこりと――多分に無意識だったが、笑っていた。ただし、鮮烈な碧眼を除いては。 「え…と、リア? ま、待って」 獅子宮の空気が一気に張り詰めるのに、アイオロスが慌て出す。遅ればせながら、事態に気づいたようだが、もう遅い!! パリパリと小さな放電がアイオリアに纏わりつく。 そして、次の瞬間、獅子宮全体から盛大な雷光が立ち昇った。 その後、フラフラしながら、十二宮の階段を上がっていくアイオロスの姿が見られたが、賢明にも声をかける者はいなかった。
『星矢・星影編で射手誕 with キョウリュウジャー』 お礼SS No.168
「おー、リア。来てくれたのか♪」 俺が顔を見せると、本日の主役はエラく機嫌の良さそうな、満面の笑顔で迎えてくれた。 「しようがないだろ。まーた、黄金聖闘士《おまえら》数人がかりで、拉致られるのはゴメンだからな」 一年前の『この日』の出来事は忘れようがない。ったく、黄金聖闘士筆頭の一人のくせに、一番、子供っぽい奴だ。 末弟のはずの蠍座なんて、むしろ、こいつよりも世話焼きの上に気遣いがハンパないぞ。そのせいか、ミロに頼まれると、最近では余り冷たく断れなくなってしまった。他の連中もその辺に気付いたらしく、ミロを間に立てようとするのだから、あいつも迷惑だろうな。 それはともかく、本日は射手座のアイオロスの誕生日で、嫌々、聖域主催パーティとやらに出向いてきた。本当に嫌々、という態度を前面に押し出していたが、全く堪える様子などないのだから、羨ましい性格をしているもんだ。 しかも、 「な、リア。ちょっと、頼みがあるんだが」 「何だ?」 頃合いを見て、抜け出してやるとか考えていると、主役が声をかけてきた。アテナ及び黄金聖闘士たちと一通り、挨拶を交わすと、俺の周囲からは人はいなくなる。最近は候補生たちには割りと人気があるのだと、察するようになったが、聖闘士となると、まだまだ、批判的意見の持ち主の方が多い。 だから、暇を持て余していたが、何故か、主役殿は人を放り出して、俺に声をかけるのだ。 「君のことだから、プレゼントなんて、用意してないんだろう」 「野郎から誕生日に贈り物されて、喜ぶような年か。俺なら、貰うのもやるのもゴメンだ」 だから、この数年は夏の獅子座の祝いは聖域では行われていない……はずだ。飲みたいだけの口実なら、別に誕生パーティでなくても、いいだろうに。 ささやかな贈り物というのなら、それこそ、大人の男なら、酒の一本も贈ればいい。 「まぁまぁ、そう怒るなよ。だからさ、ちょっと、君にやってみてほしいことがあるんだ」 「何を?」 「ちょーっと、こっちに来てくれ」 首を傾げながら、手招きするアイオロスに着いていく。碌でもないイタズラを企んでいる可能性が非常に高いような気がする。 「な、リア。これさ、着けてみてくれないか」 「………………はい???」 これ、とは幾つかのカラフルな物体が用意されているが、何だか関連性が見えない。 ちょいと変わったケータイぽい代物に、ガントレット? それから――刃はないものの、形の上では特大の剣。但し、質感はやけにキラキラとリアルな金属っぽい。よもや、聖剣やらの類なのか? 「何だよ、これ。聖闘士に武器は御法度じゃないのか」 例外として許される天秤座の黄金聖衣《ライブラ》を構成する剣とも明らかに違う。 「まぁ、説明は後。獅子座の黄金聖闘士たるリアステッド君に是非に着けて貰いたくて、創ったんだ」 「創ったって…。だから、何なんだよ、これは」 「フ…、聞いて、驚けッ☆ キョウリュウゴールドの専用装備シリーズだ」 「――――…………えぇと、どう反応すべきだ?」 何だか理解不能すぎて、とりあえず、誰か説明できそうな奴はいないかと辺りを見回すが、だぁれも近付きたくないようで、人っ子一人いない。 アイオロスは滔々と説明を始めた。 「キョウリュウジャーは日本が世界に誇る特撮文化が生み出した今年のスーパー戦隊だ」 「特撮? あぁ、ウルトラマンとかのことか」 「うむ。ウルトラ・シリーズも素晴らしいが、キョウリュウジャーはスーパー戦隊だ。仮面ライダーでもないぞ」 「戦隊…、あー、パワーレンジャーだな」 それなら、アメリカ版もやっている。少し前には舞台はアメリカだけど、漢字の力を使う連中の話だとか、ジャックも好きだからな。そういう知識だけは結構、あったりする。 我らが聖域の英雄殿は日本にいる間に、特撮にハマったらしい。殊に、今は戦隊物がお気に入りってことか。 「で、ゴールドはキョウリュウジャーの追加戦士、その名も“雷鳴の勇者”なんだ」 「雷鳴、ねぇ。雷繋がりで、一応は獅子座の黄金聖闘士の俺にそいつを着けろとかいう、しょーもない発想なわけか?」 「プレゼント代わりだ。それくらい、いいだろうが」 「プレゼントを強要する辺り、すっかり間違っているけどな。ま、あんたに言っても、何とかに念仏か」 その上、「創らせた」とか言ってるし。誰に創らせたのか――疑問には思ったが、それこそ、『聞かぬが花』とか『知らぬが仏』というものだろうか。……いや、大分、違うかな? 「なぁなぁ、リア。早く着けてみてくれないか。でもって、名乗りと決め台詞を頼むよ」 「んな、恥ずかしい真似ができるかっっ」 大体、聖闘士としての自分の技を叫ぶのだって――滅多に機会もないが、無茶苦茶、ハズいんだぞ。 そこで、ふと思いついた。技? 技といえば、 「あー、射手座のアイオロス殿。そーいや、そちらの必殺技は何て、言いましたっけ?」 「ん? 幾つかあるけど、一番はやっぱり、アトミック・サンダーボルトだな。うん」 「ほぅ、サンダー。そりゃ、奇遇だな」 「い? 奇遇って……」 「まんま、雷だろうか。自分で着けてみればいいんじゃないか。ホラ、手伝ってやろう」 「ちょっ…、リア。それじゃ、目の保養にならないTT」 「何が保養だ。意味解んねーよ」 傍から見れば、相当にどーしよーもない理由で、揉み合うのが黄金聖闘士二人とは……一応は俺もだけどな。ともかく、笑える光景に違いない。 「……何やってんだか」 「楽しそうで、いいじゃないですか」 「楽しいのかな、あれ」 「とりあえず、主役は彼に任せておきましょう」 「あー、お前、これで楽ができるとか思ってるだろ」 「その質問、そのまま、そっくりお返ししますよ」 などと、好き勝手に言いながら、行ってしまった連中も調子のいいことだ。 しかし、こんなバカなやりとりも、まぁ、確かにちょっとは楽しいもんだ。
『星矢拍手纏め』 2013年の誕生日祝い話。この年、大ヒットな“カラフルな奴ら”^^ 『獣電戦隊キョウリュウジャー』とのコラボ?となりました。まぁ、要するに、輝の趣味です^^
2014.03.13. |