真夏の夜の…
夏とはいえ、砂漠の夜は肌寒い。見回りの兵はジャンパーの前を合わせ、僅かに身を震わせた。 「さっさと済ませて、寝たいなぁ」 この巡回さえ終えれば、交替だ。昼よりは夜の方がよく眠れるし、早くベッドに潜り込みたい。 薄暗い廊下を懐中電灯を片手に歩く。 「こんなトコに、敵が入り込むようなことがあるとも思えないけどなぁ」 確かに──だが、不埒者が味方にいないとも限らない。元はジオンの基地でもあるし、知られていない潜入経路がないともいいきれない。用心に越したことはない、というわけだ。 未来永劫、この古典的な見回り手段は変わらないのかもしれない。 不意に更なる寒気を感じた。どこかの窓でも開いているのだろうか。動かした懐中電灯の光が何かを捕らえた。 人の気配は感じなかったが、幾らか緊張するのは当然だ。だが、光の中に浮かび上がったのは──……。 「何だ、猫かよ」 大きく息を吐き出すのに、本当に緊張していた自分に苦笑したくなる。 「しかし、お前。どっから入り込んだんだ」 敵ではなく幸いだ。ちょこんと座り、光を受けても逃げることのない黒猫に、歩み寄る。 その辺からでも、異常を感じて然るべきだったかもしれない。 とりあえず、逃げもしない猫をどうするべきかなどと考えながら、手を伸ばす。 「…………え?」 光が明滅する。懐中電灯と廊下の誘導灯がチカチカとハーモニーを奏でる。明暗を繰り返す視界の中、猫の姿が薄れていく!? 背筋をサアッと悪寒が走った。 「……………………」 屈み込んだまま、硬直してしまう。伸ばされたままの手は何も触れなかった。落ち着きを取り戻した光の輪の中には、何もいない。何も……。 「…………でっ、で、でででで…っ」
ニャァ〜〜ァ トドメとばかりに響く寂しげな声。 「んでっ、出たぁ〜〜っっTT」 絶叫だけが、闇夜を駆け抜けた。
「わざわざ、本棟まで車付きとは豪勢だね」 「歩いて、数分もかからない距離なのにね。おまけに、基地司令までがお出迎え下さるなんて」 「士気上げに利用したいんだろ? ホワイト・ディンゴ《おれたち》は特殊遊撃MS小隊の中じゃ、名が売れてる方だからさ」 砂漠の友軍基地に到着した『ホワイト・ディンゴ』のメンバーは熱烈な歓迎を受けた。 アリス・スプリングス無血開城以来、どこに立ち寄っても、こんな様子だ。程度はあるが──ここは些か、熱が入りすぎに感じられる。当のメンバーが驚くほどに。 次の作戦もあって、基地に赴いた彼らだ。とにかく、基地本棟に向かう。短い道すがらを二台のジープに分乗する。レイヤー隊長だけは基地司令と同じジープだ。 続くジープの助手席に座ったレオンは僅かに暑さを忘れさせる風に目を細めた。ジリジリとアスファルトの滑走路を焦がす陽光から生まれた熱風ではあるが。 本日も太陽は容赦なく地上を照りつけ、天空を渡る。 基地司令には聞こえないのをいいことに、後部座席で夫婦漫才に花を咲かせるお二人さん──ある意味、長閑だと苦笑する。 ……が、次の瞬間、苦笑も引きつる。 「──危ないっ!」 ソレを見た瞬間、隣のハンドルを奪うように回し、ブレーキを踏み込んだ。キキッとタイヤが悲鳴を上げ、搭乗者を振り回して、ジープは急停車する。 「な……何をなさるんですか!?」 「タタタ……。もう何なのよ、レオン。危ないじゃない」 「どーしたんだよ」 ハンドルに顎をぶつけた運転手役の兵士は勿論、後部座席からも文句が上がる。二人はつい、感心してしまいたくなるような難しいような体勢で、絡んでいた。一応、マイクがアニタを庇ったのだろうが。 「あ、いや。前に猫が」 「猫?」 「──ネ、ネコッ!?」 こちらの反応は分かれたようだ。兵士が何故か、怯えた様子なのに訝しむ。 「いきなり、前に走り込んできただろう。黒猫が」 「…………」 反応が、ない。代わりに座り直したマイクが身を乗り出してくる。 「で、その猫は?」 「ハネちゃいないから──あ、と。上がってきたぞ」 レオンの視線はボンネット上付近に固定。目を向けた漫才コンビは声をなくし、顔を見合わせる。 「えーっと、レオン。どこにいるって?」 「いや、そこに……」 言葉を呑み込み、ジーッと見据えるレオンに、ビビりまくるのは運転席の兵士だ。 「ね、本当にいるの?」 「あぁ…。いるっちゃ、いるけど──実体じゃないや」 「うわわわわわーーーーっっっっ★」 堪らず、真青になった兵士がジープから転がり落ちる。そればかりか、少しでも、離れようと這って逃げ出す。 「皆、どうしたんだ!」 レイヤー隊長が基地司令共々、戻ってきた。それは当然だろうが、さて、どう説明したものか。黒猫のユーレーに車、止められました、てか?
が、意外や事態は深刻だった。 「どうも、昨夜からあちこちで出没しているらしい」 「って、黒猫のユーレーが?」 「真昼間にも出るなんて、ユーレーの常識のない奴だな」 「しかし、目撃者はかなりの数になるそうだ」
彼らと同様に、車その他の前をいきなり横切った。 血まみれの黒猫が就寝中の兵士の上に飛び乗ってきた。 食堂を走り回り、魚を咥えて、逃げた……等々。 「ユーレーがどうやって、サカナ咥えるんだ?」 「さぁな。とにかく、だ。最初は笑い飛ばしていたそうが、余りに多くてな。任務にも支障を来すようになって、困っているらしい」 「そりゃ、困るでしょーねぇ。で、レオンに泣きついてきたと?」 珍しく不機嫌そうに黙りこくっている僚友を見遣る。 「あの大歓迎振りって、実はこういう理由《わけ》だったってこと?」 「かもなぁ。その筋じゃ、レオンはすっかり有名人だからな。ホワイト・ディンゴのパイロットとして以上に」 「全く冗談じゃないぞ」 不機嫌そう、ではなく、実に不機嫌そのものな唸り声なぞ、本当に珍しい。 「また、あることないこと、誰かさんが吹聴してくれるから」 「おっ、俺はあることしか言ってないぞ。視えるし、聴こえるのは本当なんだろう」 「──だからって、僕は霊祓師《エクソシスト》でも降霊師《イタコ》でもないの!」 睨まれ、首を竦めるが、困ったように髪を掻くばかりだ。 「ハァ…、ここで、否定して貰いたかったかなぁ、なんて」 「何よ、今更」 レオンが所謂、見事なまでの霊感体質(?体質なのか??)なのは今に始まったことではない。これまでもあちこちで、色々とあったのだ。マイクとて、随分と巻き込まれている方だ。 「しかし、まぁ。そのために基地全体が浮き足立っているのは確かなわけだし、放ってもおけんだろう」 とりなすように、レイヤーが言うのに、レオンは深く嘆息した。 「別に調べるのが嫌とまでは言っていませんよ」 渋々ではあるが──その実、そう装っているだけのようにも思えるのだ。 「でも、調べるのはいいけど、当てとかはあるの?」 「ないこともないな。そいつが出没し始めたのは昨夜からなんだが、昨日の朝、整備が事故ったらしい」 猫を一匹、轢いてしまったのだそうだ。砂漠にポツンとある基地に、どこからやってきたのか。積荷などに潜り込んだのだろうと思われるが、とにかく、一匹犠牲になった。紛うごとなき、黒猫が。 「げ……んじゃ、やっぱし轢かれた恨みで、化けて出たってことか?」 顔を引きつらせ、身震いをするマイクに、レオンが眉を顰める。 「そういう風に、決め付けるな。恨みやらで、この世に残るってのは半端なことじゃないんだ」 「そ…、そうなの?」 「そうなの。考えてもみろよ。ここは元はジオンの基地だぞ。それで残るのなら、わんさか出そうなもんだろう」 「──ちょっ、レオン! やめてよ、そういう話はっ」 皆まで言わせずに椅子まで倒して、立ち上がり、金切声を上げるアニタにまた嘆息。 「端から、そういう話をしてるんじゃないか」 「けど、怖いじゃない! 敵兵の亡霊がいるかもしれないなんて」 「いや…、だから、いないって──人の話、聞いてるか? そうそう残れないんだよ」 「残ってるかもしれないじゃない!」 レオンは呆れて、苦笑してしまった。そんなことを真面目に説明しようとしている自分にもだ。 「だとしても、どうせ、君には見えないんだから。いないのと同じだろう」 いないと同じ──なんて、微妙な慰めだ。見えなくても、そこらにいるかもしれない──それだけで、震えがくるではないか。 「とにかく、やるだけやってみますよ。作戦前に片付けたいですからね」 あっさりとした言葉に、噂を作っているのはマイクの吹聴より、レオン自身の言動のせいのように思われた。 「何か、もう目星をつけてるみたいですね。あいつ」 「かもしれんな……ん?!」 『ホワイト・ディンゴ』のブリーフィング・ルームとして割り当てられた部屋から出ていくレオンの足元を、黒い影が過ぎったように見えたが、猫の姿かどうかまでは判別できなかった。 「にしても、アニタちゃん。まだ震えてんの。可愛いねぇ」 「茶化さないでよ! あんた、何とも思わないの!?」 揶揄われたのが余計に腹立たしいのだろう。更に怒りを募らせるソナーオペレータに苦笑する。 「何を? 敵兵の亡霊がウヨウヨしてるかもしれないって? でも、確かに俺には見えんしさ」 「無神経ね。男って」 「だから、何がだよ、無神経も何も、俺たちは軍人で、戦争してるんだぜ? 犠牲が零なんてのが、あり得ないのは敵も味方も同じだろう。ユーレー話の一つや二つも付物だよ」 「で、でも、それとこれとは」 「大体さ、いるかどうかも分からないユーレーなんかより、確実に次に当たる生身の敵の方が俺は怖いね」 これまでは敵を倒して、戦いに勝つことで生き抜いてきた彼らだ。だが、次は? 負けて、命を落とすのはこちらかもしれない。敵を恨んで、化けて出ても仕方がない。生き延びなければ、意味はないのだ。 マイクの割り切りの良さをレイヤーは羨ましく思う。別に敵の亡霊を畏れたりはしない。だが、本当に霊が、死者の霊というものが存在するのなら──……。 「……また、埒もないことを」 レオンを疑うわけではないが、彼と違って、自分にはそんな『存在』と交わることは出来ない。 ならば、やはり存在しないも同然なのだ。 ☆ ★ ☆ ★ ☆
「キャー」だの「うわー」だのと、行く先々で時折上がる悲鳴に辟易してくる。 普通、こんなにも『視える』人間はいないものだ。それが視えるということは、そうさせているということに他ならない。とはいえ、相手は猫だ。意識的な仕業とも思えないから、単にその力が強いということだろう。 「猫だって、残す思いはあるだろうからなぁ」 そも、死者の霊は──動物も含めて──死ねば、『この世』を離れるのが理だ。それが残ってしまうのは強い思いを残しているからだ。 だが、強い思いとはいっても、恨みなどの負の思いでは中々、残れないのものなのだ。理を跳ねつける『負』の思いは尋常ではないレベルなのだ。所謂『怨霊』という類だが、レオンも話に聞いただけで、実際に『遭った』ことはない。遭いたくもないと心底から思うが。 黒猫は時々、立ち止まり、「速く来い」と促すようにレオンを振り向く。 滑走路の騒動直後、一時は消えたが、レオンが一番「話の通じる奴」だと判断したらしい。ブリーフィング・ルームに入って、程なく現れた。 アニタを脅かしても仕方がないので、黙ってはいたが、ずっと一緒に話を聞いていたのだ。そわそわとしながら。早く自分を連れ出したいのは目に見えていた。 そうして、猫に案内されて、辿り着いたのは本棟を出て、基地の外れも外れにある建物だった。だが、酷く痛んでいる。扉は壊れていて、半開きだ。中に入ると砂っぽい。あちこちに隙間があり、空の色も判別できるほどだ。 風程度は凌げる、遮蔽物といったところか。取り壊さないのは他の作業の邪魔にもならないし、面倒を省いたのだろう。 かつての所有者たるジオンの遺留品と思しき物まで落ちているほどだ。 さておき、レオンの目的は別だ。猫に続いて、奥を目指す。 「いきなり、崩れたりはしないよな」 そして、物陰に目指すものを発見した。膝を落とし、手を伸ばす。 「なるほど、誰彼構わず、訴えかけるわけだ」 順に触れ、何度かは眉を顰めたが、 「マイク、アニタ。来てくれ」 ガタンという大きな音にも反応は弱い。すぐに音を立てた犯人が顔を出した。 「あれ? 気付いてたか」 「当たり前だ。それより、マイク。上着を貸してくれ」 「へ? 何で」 「いいから、貸せよ」 いつになく厳しい物言いに、まだ怒ってんのか、とかブツクサ言いながら、上着を脱ぐ。 奪うように受け取ったレオンはその上着に発見したものを包み込んだ。そして、 「アニタ、とにかく暖めてやって、ミルクでも飲ませてやるんだ」 「この仔たち……まさか」 「早く。あぁ、ミルクはそのままだと害になるそうだから、ちゃんと調べてからやってくれ」 「わ、解ったわ」 二匹の仔猫を包んだ上着を抱え、アニタは急ぎ本棟へと戻っていった。 事の成行きに驚いていたマイクは我に返り、カリカリと頭をかいた。 「……いいけどさぁ。何で俺の上着なわけよ」 「こっちの方がよかったか」 レオンも上着を脱ぐと、同じように何かを包み始めた。 手元を覗き込んだマイクは息を呑む。三匹の仔猫──だが、既に冷たくなっているのは明らかだ。 レオンなりに気遣ってはくれていたのだと、無論、解らないでもなかったが、言葉が少なすぎるとは思わずにはいられない。
命の消えた三つの亡骸とともに、外に出る。マイクは我知らず、大きく息を吐き出した。 「どうするんだ?」 「せめて、母猫と一緒に眠らせてやるさ」 「その辺に埋められてんのか? 場所、分かってるのか」 「あぁ……」 特に説明するでもなく、レオンはスタスタと歩き出す。場所なら、当の母猫が教えてくれる。 先導する黒猫は振り向くと、ちょこんと頭を下げた。まるで「有り難う」と言っているように……。 「ま、待てよ、レオン。お前、掘るもんもってんのか。素手で掘る気かよ」 慌てて、マイクが追いかけてきた。 ……それなら、大丈夫。黒猫を埋めた時に使ったシャベルが置きっ放しになっている。とは言わずにおいた。
かくして、黒猫ユーレー騒動は幕となった。 「にしても、本トに猫に振り回されていたなんてね」 「ったくな。でもま、二匹だけでも助かって良かったんじゃん?」 母と三匹の兄弟を失った仔猫たちは、当面、心配はないそうだ。砂漠の真ん中の基地で野良化させられないので、暫くはこのまま面倒を見るそうだ。 「街とかに連れてったりしないのかしら」 「もうちっと大きくなるまでは置いとくんだと。まーた、我が仔を案じた母猫が化けて出ないとも限らんだろ?」 「……やめてよ。また、そういう言い方するの」 顔を引きつらせながら、抗議するのに、マイクはニヤニヤと笑うばかりだ。全く、嫌な弱みを握られてしまった。 「しっかし、戦場で命のやり取りをしている俺らが、猫の仔を助けようって、バタバタしてるってのは──皮肉な話だよな」 猫の仔は助けようとしても、同じ人間であるはずの敵とは命の奪い合いをしているのだ。確かに飛び切り上等な皮肉だろう。 「だとしても、あの仔たちには関係ないわよ。それより、まだ、そこらにいたりはしないわよね」 「どうかね。目撃談がパタッと消えちまったから──成仏しちまったのかもしれないな」 レオンに聞いてみたら? と言うと、思いの他、激しく拒絶された。 「どんな答えが返ってきても、怖いじゃない!」 確かに……。苦笑しつつ、窓の外を見遣る。 件の仲間は猫の墓参りにいっているはずだった。
誰の仕業だか、いつの間にか、十字架が立ててあった。純粋に『彼女ら』の死を悼むが故か、恐れからか。どちらにしても、慰めにはなるだろうか。 レオンは十字架の前に膝をつき、盛られた土の上に薄めたミルクを振りかけてやった。 「最後の挨拶かい」 「──そうですね。もうこの基地に立ち寄ることもないでしょうからね」 振り返らずに答える。レイヤー隊長がレオンの背後に立ち、細やかな墓を見下ろした。 「恨みではなく、子を思うが故に、か。猫でさえそうなんだから、人も残ってしまうのかな」 「……ジオンの、将兵ですか」 アニタには聞かせられないような話になりそうだ。尤も、彼女も似たようなことは連想させられているだろう。口にしないだけで。 「故郷を遠く離れた、こんな地の果てで……思いが残らないはずはないんじゃないかな」 「そうですね」 「なら、やはり、いるのか。我々には視えないだけで」 「いませんよ」 視線も上げずに、レオンはキッパリと断言する。レイヤーは面食らう他はない。 「だが、しかし……」 「ここには、いません。隊長の言葉通りですよ」 そこで、漸く視線を振り向けてくる。自分たちには視えないモノも捉える双眸が、今は自分を映し出す。 「いつまでも、こんな地の果てに留まっていたって、何の意味もないでしょう」 だから、『彼ら』は還ったのだ。あるべき思いを届ける場所へと──……。 「本当に、アニタも騒ぐ必要《こと》なんてないんですよ」 そして、レオンは膝についた土を払いながら、立ち上がった。 「そろそろ、戻りましょうか」 「そう、だな」 今一度、騒動の種であった『墓』を見遣り、本棟へと歩き始めた。思わぬ『任務』は果たしおせたが、本来の任務も待っている。砂漠の戦場へと繰り出すのも間もない。 その砂漠の遠くの方で、砂が舞っている音が耳を打つ。 ジオンにとっては故郷からは遠い遠い埃っぽい地の果てでも、レイヤーにとっては、この地こそが故郷だった。……ならば? 「なぁ、レオン」 「はい?」 いつの間にか、歩みを止めていた。数歩、先で振り向いたレオンが問いかけを待っている。 だが、遂にその言葉は口を突かなかった。その代わり、 「いや……あぁ、そうだ。あの猫はどうなったんだ? 嘘のように、目撃されなくなったようだが」 「さぁ。私も見ていませんから、成仏したんじゃないですかね」 「そうか。それなら良いんだ」 何が良いのか。自分でも、支離滅裂のように思えてならない。 「それじゃ、行こうか」 再び、歩き出し、追い抜いていく隊長の背中を凝然《じっ》と見遣る。 レイヤーが本当は何を言おうとしていたのか──見当はついていた。目を眇め、軽く嘆息する。その目は隊長の周囲を取り囲む数人の影を捉えていた。 「……さぞかし、心配でしょうね。クレアさん」 勿論、その呟きは誰の耳にも届かなかった。
おまけの後日談。
件の基地を離れ、作戦に従事する『ホワイト・ディンゴ』隊──殊に整備班は昼夜兼行の作業を強いられていた。連日の徹夜作業で、疲労困憊していく中、またもや、ユーレー目撃談が降って湧いたりして。 「おいおい、またかよ。もういいよ、そのネタは」 「ネタじゃないって。本当に出たんだよ、黒猫が」 「しかも、また黒猫のユーレーかよ。二番煎じは面白くないっのて。大方、徹夜続きで幻を見たんだよ」 ユーレー話が頭にあるせいだ、と有耶無耶になったが……真相を知る者は果たしているのかどうか。 件の黒猫が感謝の気持ちから、大恩人たる黒髪の仙人の使い魔になったとか、ならないとか^^;;; それも定かではない。 ニャ〜(をわし)★ 『猫祭』第3弾☆ 久々の『コロ落ち』で、こんなんでした^^;;; ゲーム話以上にバカ? ギャグなんだか、シリアスなんだか、オチャラケなんだか、今一つ判別できんよーな代物になってしまった。『霊能力者レオン』つーArk☆版設定を借りて、書いてみたいという思いはずっと前からあったわけで、一度だけ『腕時計・外伝』で使ったりもしたっけかな。でも、Ark☆版ではギャグにしかならんのに、輝では完全ではないんだね。 当然ながら、『元祖DC&小説版』とは全くの別人なので、ご注意を☆ え? 今更、当たり前のことを?? ご尤も^^;
2005.03.11
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