白い壺 入江和馬


『では、お宝の登場です!!』

 どの時代でもあるお宝自慢の番組。そこで、司会者の横に笑顔で立っていたのは、スノーだった。
「俺は止めたんだよ。」
 レオンはため息をつきながら、紅茶を飲む。
「でしょう? あれを貰ったのがそもそもヤバいって。」
 クリスは呆れた様子でレオンに答えながら、スコーンをつつき、
「そうよねえ。あれは……。」
 その横でテレビを見ていたミライもクリスに同調する。
「私見えない体質だけど、あれだけはなんか感じるんだよねえ。」
 マサキはブランデーをティーカップにたっぷり注ぎ込む。
 テレビ出ているスノーの笑顔をテレビ越しに冷ややかに見る四人がそこにいた。
「え、ええ?? な、なんで? スノーはどう……。」
 その後ろのオープンキッチンで夕食を作るブライトはその様子を見て声をかけた。紅茶もスコーンも手作りで四人に出したブライトは、夕食作りを始めていた。久しぶりに集まったみんなに美味しいご飯を、と思い頑張っていたのだが、やはり会話が気になるのだった。
 しかし。
「「「「ブライトはご飯作っててね」」」」
 そんなブライトにある意味での笑顔で四人は声をかけると、またテレビの方を見る。
 そんな笑顔を見て一瞬凍りついたブライトだったが、自分の運の悪さを呪いながら、夕食作りに集中していった。


★      ☆      ★      ☆      ★


 宇宙世紀に入り大きな戦争が続いたことにより、歴史的な財産はほとんど失われた。が、一方貴重な品々も残ったのだが、その分偽物も出回ることとなった。その偽物は、鑑定人が見ても分からないものも多く、戦後問題の一つとなっていた。
 それを解決させるための、政府公認の、お宝鑑定番組が放送されたのだが……。
 ほとんどお宝を出す人間がいない。まあ、誰も好き好んで泥棒に来て欲しくないというのが本音だろう。まだ治安も悪い今日日、誰も好き好んで出したくないのは本音だろう。
 が、その番組自体は、連邦側の人間には受けが良かった。なにしろ、偽物と判れば、それが勢いよく壊されるのだから、見ているだけの人間から見れば気持ち良いのだ。視聴率はまずまず良い番組でもあった。
 スノーは常々、その番組を見ていて「俺も出たいなあ」とは言っていたのだが……。
 さて、その番組も一年が過ぎ、一周年記念の特別番組を放映することとなり、大々的にお宝を募集することとなった。
 ちょうどその時、スノーが知り合いから花瓶を貰った。
 スノーは大喜びで、そのお宝番組に応募し、早速生中継にての放映になったのだ。
 しかし、そのもののヤバいルートをスノーは確認することをせずにいたのだが。
 レオンがそのやばさを感じ、スノーに注意したのだが、聞かず……。
「あの壺って……。」
「多分レオンが思っていることがあっていると思うよ。」
「アムロが言っていたあれよね。」
「やっぱり? そうかと思ったんだよねえ。」
 白い壺は、鑑定人が数人で鑑定しているのを見ながら、四人はため息をついた。何故これだけ分かりやすいのに、という気持ちで。

『さて、鑑定結果です!!』
「……に、偽物!!」
 偽物と判定され、スノーは慌てたが時既に遅し。あっという間に壊され、会場は沸く一方、スノーは肩を落としたのだった。
「あれは、持ち主が偽物にしたんだろうね。」
 レオンは冷静に指摘する。分かっていたことだった。持ち主がそういうことをするのは。
「そりゃそうよ、あれは献上品として持っていたわけだし。」
 クリスも分かっていた結果だったが、スノーには同情を禁じえない。なんであんな優秀な軍人なのにこういうところは、すっかり抜けているのかと。
「そうよねえ。本当はねえ。」
 ミライもレオンが言うことが分かるだけに、止めればよかったかと考え込んでしまった。
「しかし、変な空気が消えたけど、あれで気が済んだのかな?」
 マサキはすっかりティーカップの中身を飲み干し、ブランデーをつぎ込みながらレオンに聞いてみた。実際スノーを取り巻く空気が消えたのは、確かなことだった……マサキはそこまでしか分からなかったのだが。
「多分ね。光に包まれているし。」
 レオンはマサキの持っていたブランデーボトルを受け取ると、自分のにも注ぎ込んだ。
「そっか。それはよかったわね……。」
 マサキは素直に感心した。自分には分からない世界が多々あることは知っていたが、レオンにはそういう分野ではかなわないって事はよく知っているだけに、珍しく大人しく過ごしていた。
「そうよね、やっと想いの人の元にいけるんですからね。」
 ミライは素直に感心して、ブライトの夕食作りを手伝うためにキッチンに向かった。



「想いかあ……。大きいものだったんだねえ。」
 マサキは素直に感心している横で、クリスはレオンに話し掛ける……ミライたちには聞こえない程度に。
「ねえ、レオンでしょ? そういうアドバイスを本人にしたの?」
「もちろん♪」
「やっぱり……本人が凄く喜んでいるし、現にここにいるしね。レオンに感謝しているわよ?」
 クリスが指をさした先には……何も見えなかったが、何かあることは確かだった。
「ああ、気にしなくて良いって言ったんだけどね。」
 レオンは笑顔でそっと空を指すと、その光は消えていった……ようにマサキには見えた。
「……レオン〜スノーはそのこと知ってるの?」
 マサキが突っ込む。
「まさか、知るわけないよ♪」
 クリスとマサキは心からそのレオンの笑顔も方が怖いと思ったのだった……。


オマケ by 輝


 ムスッとしながら、戻ったきたスノーをレオンは苦笑で迎える。
「残念だったな」
「いいんですよ、別に。慰めてくれなくたって。どーせ、タダで貰ったモンだし」
 そこからして、間違っている。
「スノー、無料《タダ》より高いものはないって格言、知ってるか」
「どーゆー意味で、聞いてんです」
「いや……。まぁ、元気そうで何よりだよ」
「訳、解んないっスよ」
「解らなくて、いいよ」
 苦笑で紛らわせると、小首を傾げたが、それ以上は問い質そうとはしなかった。スノーなりに、『不穏な気配』を感じたのかもしれない。
 全く世の中には『知らなくてもいいこと』も多々あるものなのだ。

 だが──レオンの忠告にも拘らず、凝りもせず、時々、解りもしない骨董やら何やらを入手するようになった。お宝番組には出なかったが……。
 既に窘めるのも諦め、レオンは嘆息する。
「……仕様がないな。それにしても、タフだな。あいつは」
 どーゆー訳か、バリバリ曰くありな品ばかりがスノーのところに集まってくるのだ。最初の花瓶──壺なんか『悪意がない』だけ、まだマシな方だった。
 今じゃ、殆ど『呪いのアイテム』としか言いようのないモノまでが、引き寄せられているとしか思えない。
 お陰で、周囲が堪ったものではない。中てられる者が続出しているというのに、当の持ち主はケロッとしているのだ。鈍感にも程がある。
 勿論、レオンはガッチリ、ガードして、迂闊には近付かなかった。しかし、「何とかしてくれ」と周囲が泣きついてくるのも時間の問題だろう。
「やれやれ、面倒だなぁ」
 人の気も知らず、『お宝』を抱えてニコニコしている姿を見ると、ちょーっとばかし殺意が湧いてきそうだった。

指輪



 40000到達記念に入江さんよりの頂き物です。先日の飲み会で、何だか湧いたネタを送ってきてくれました☆ 久々のGキャラたちが──オリキャラも混じってるけど、相当に妙なことになってます♪(特にレオン、あんただ。どんどん原典から外れていく;;;)
 主夫しちゃってるブライトが密かにツボかも……いやっ、ダジャレじゃないぞ★

2007.09.03.

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