受け継がれしもの〜番外

不滅篇

 “逢魔の森”──此処がそう呼ばれるようになったのは何時の頃からだったか。“黄金の地”にやってきた時、スピリットベース以外で足が向くといえば、この森くらいなものだ。
 初めて、見つけた頃はまだまだ若い樹が集まる林程度だった……ろうか。もう随分と前のことなので、確かなところは覚えていなかった。
 故国のブンパッキーが潜む滝を抱く森に何時しか似るようになったからか。長き戦いの間、心を癒す場といえば、この森だった。
 世界に人間が増え、何処に行っても騒がしくなっていくにつれ、古き時代の生まれである鉄砕には静かに過ごせる場が必要だったのかもしれない。
 そして、鉄砕が留まることが多かったからなのか。それとも、森というものがそういう性質を持っているのか。やがて、幻術がかかりやすい場にもなっていた。それも幻に幻が重なり、複雑に絡んでしまった場も多い。人が迷い込み、抜け出せなくなるとの評判も立ち、いつしか“逢魔の森”と呼ばれ、人が近づかなくもなっていった。
 “魔”に逢う森……中には幻を透かすように、本質を見抜く者もいたわけだ。幻の奥に佇む“魔”とは即ち、幻を生み出していた張本人に他ならなかったのだが。
 もっとも、意図した術でもなければ、迷い人も長時間、囚われることはないのだ。
 それでも、鉄砕にとっては数少ない憩いの場といえる。訪れるのは或いはこれが最後かもしれないが……。
 再び目覚めるかも知れぬ眠り。仮に目覚めたとしても、その時、この森が残っているかどうかも判らないのだ。
 ……ただし、幻のためか、これまでは手を出そうなどという勇気ある者はいなかった。何しろ、“逢魔の森”だ。ある種、呪いの森のように見られているからに違いない。
 意識してのことではないが、己が術が故に、人の手が入らず、森を大きくする一因にもなったと思えば、不可思議さも募るというものだ。

 そうだ。この森も随分と永き時を渡り、大きくなっている。人よりも遥かに永き時を──木々は越えることができる。さすがに意思の疎通までは無理だが、最早、実体もなく、異質な存在である己を、彼らは受け入れてくれるのもスピリットとなった鉄砕が人よりも彼らに近いからかもしれないが。
 不意に、森とは異なる気配が感じられた。自然発生的な幻をものともせず、こちらに一直線に向かってくる。目を遣れば、緑の中ではやたらと目立つ真っ赤なジャケットが木立の向こうに見え隠れしていた。
「良く、気付いたものだ」
 とはいえ、逃げる必要もなく、ただ、彼が辿り着くのを待つ。
「よぉ、鉄砕。元気か」
 破顔しながら、それこそ、元気一杯に声をかけてくる。
 何故ともなく、鉄砕は脱力した。これが彼らにしてみれば、消息不明になっていたスピリットに向ける言葉だろうか。
 とはいえ、それこそが桐生ダイゴという若者なのだといえば、妙に納得してしまうのだが。
「何故、此処に来た」
「んー、今なら、いるんじゃないかと思ってさ」
 つまり、ダイゴはスピリットレンジャーたちが消えたとは思っていなかったというわけだ。皆、真也と同じく、いわゆる、成仏をしたと思っていたようだというのに。
「あぁ、ブンパッキーが教えてくれたぜ」
 尋ねれば、あっさりと答えてくれる。結構、とんでもないことのはずだが――元々、スピリットレンジャーの“相棒”たる獣電竜は獣電戦隊に託していたが、デーボスを倒した最終決戦を経て、また地球のメロディも直接に聴くことができるようになった彼にとっては今や、ガブティラだけでなく、全ての獣電竜が“相棒”も同然ということなのだろう。


★        ☆        ★        ☆        ★


「なぁ、鉄砕。また眠るって、本当か?」
 珍しく窺うようにしているのが妙におかしい。知っていることにはもう驚かなかったが。それもブンパッキー経由の情報か。
「あぁ。今回ばかりは、さすがにダメージが深いのでな」
 それこそ、あのマッドトリンから受けたダメージも大したものではないと思えるほどに。
「そっか……」
 そのことを確かめるために、わざわざ、こんなところまで来たのだろうか? “逢魔の森”とまで呼ばれる幻視の森にまで……。
「また、目覚めることもあるのかな」
「さぁな。そればかりは俺にも分からんよ」
 真也に説明したことをまた繰り返す気にもなれなかった。だが、ダイゴは承知していたようだ。
「ブンパッキーが戦うようなことになれば、きっと目覚めるんだよな。ブンパッキーが言ってた。あんたには人間にはとんでもなく永い時を付き合わせたのに、これからも、そのつもりでいてくれてるってさ」
 些か気になる言い方をしてくれるものだ。視線を向けると、ダイゴは苦笑して、肩を竦めた。
「なんつーか、あんたらしいよな。とにかく、“相棒”が大事。世界が大事で、人が大事。自分のことは後回しっつーかさ」
「別に後回しにしているつもりはない。ただ、俺がそうしたいというだけのことだ」
 自分のためと他のためという線引きが曖昧なのは確かだ。それも生まれた時代によるものなのか、それこそ、持って生まれた己が性質《たち》なのかは自分でも判断が付かないが。
「そうなんだろうけど、傍目にはさ。うーん、歯痒いってゆーのかなぁ」
「それはお前の問題だろう」
 感じ方をどうこう言う気はないが――それもまた、この若者の性質なのかもしれない。キングという呼び名は伊達ではないということか。地球のキングであろうとなかろうと……。

「ずっと、ブンパッキーに付き合っていく気なのか」
「そうだな。俺が存在していられる限りは、な」
 確かに、永き永き歳月《とき》は人の心も削り細らせていくのかもしれない。スピリットであってさえも、いつかはその歳月に呑み込まれ、心を無くしてしまうのかもしれない。
 そして、スピリットとしてすら、存在を保てなくなることも考えられる。
 それが成仏とやらなのか、単なる消滅なのかも、所詮は人間如きの知りうる定理・条理からは理解できない、大いなる摂理なのかもしれないが。
 それでも、いいのだ。唯一無二と信じる“相棒”のため――いや、それこそが己のためなのだ。だから、これはきっと、我がままなのだ。
 こんな己の選択が、あの強靱な獣電竜を傷付けているのかもしれない。掠り傷さえ付けることの叶わぬ、頗《すこぶ》る固い体を持ちながら、その心は、或いは……。
 それでも、一緒《とも》にいたい。一緒に在りたい。そう願うのは、多分、酷い我がままなのだ。


「けど、その気持ちは俺にも解るよ。俺もガブティラと一緒にいたい。一緒にいてやりたい。あいつだって、俺の傍にいたいって思ってくれているからな」
 その挙げ句に、ミニティラにまで変化するようにもなったのだから、正しく“思いの力”は偉大だと信じられるというものだ。
 だから、次の言葉にも特に驚くことはなかった。
「だからさ、俺も、いつか死んだら、スピリットになる」
 あっさりとした、しかし、深い決意の表れである言葉に、驚くことはなくとも、鉄砕でさえもが怯んだのは確かだ。
 千五百年以上もの昔、己が如何にして、スピリットレンジャーとなったのか。解らないといえば、解らないのだ。なりたくて、なったのか。なろうとして、なったのか。なるしかなかったのか。
 方法などを聞かれても、多分、説明もできない。それこそ、意思の力によるもの、思いの力故なのだろうとは類推できるが、確かなものではない。
 しかも、スピリットとなれば、永遠にも等しい時が待ち構えている。真也が葛藤していたように、普通の人間ならば、その時の永さに怯むものなのだろう。
 しかし、この若い“キング”は、そんなハードルなぞ、簡単に飛び越えてしまいそうだ。当たり前のような顔で、ガブティラに寄り添い、自分たちの前に現れる。……余りにもはっきりと想像できる姿に、苦笑を禁じ得ない。
 だが、それでも、更に続けられた言葉には、どう反応すべきか迷うことになる。
「だからさ、鉄砕。安心しろよ。今も仲間だけど、俺もスピリットになれば、スピリット仲間だ。どんだけ長い時間でも一緒だかんな」
 独りじゃないから、安心しろ、と言いたいらしい。ラミレスやトリンも勿論、一緒だ、と大全開の笑顔で、請け負うのだ。

「……敵わんな。お前には」
「おう! 今なら、あんたにも勝てる気がするぜ」
「ほう、大した自信だな。ならば、最後に一戦交えるか」
 気軽に言ってみただけだが、ダイゴは急に慌てて、手を振った。
「何言ってんだよ。あんた、ダメージでかいんだろ。だから、勝てる気がするだけじゃん」
 そんなんで勝っても、詰まんねぇじゃんか、とか呟いている。それこそ、彼には侵しがたい一線とやらがあるようだった。
「手合わせは、次に目が覚めた時に頼むよ。そん時は俺もスピリットだけどな!」
「まぁ、期待はしないでおこう」
 すると、何でだよ、とか騒ぎ出した。この辺は若いというよりは、まだまだ幼い。
「ゼッテー、スピリットになってやる。でもって、あんたよりも長生きしてやっからな」
「……長生き?」
 いや、スピリットの時点で、実は生きていないだろう、とか突っ込むべきだろうか。
「あんたは俺が見送ってやる。鉄砕、忘れんなよ。約束だからな」
 返答には、間が空いた。何を思って、この若い“キング”はそんな宣言をするのだろうか?
 いや、奔放ながら、繊細さも持ち合わせている若者の内面など、単純に見えて、複雑であるのは間違いない。ただ、彼なりに自分のことを気にかけ、そんなことを言っているということだろう。
 千年を軽く超える先達であろうとも、気になるものは気になる。心配は心配だというのだから、有難く思うべきだろうか。恐らく、他の者は心配無用に違いないと思い込んでいるはずだ。
 そういう意味では、自分にとっても、他の者とは異なる考えや態度を示す、得難い相手ということなのかもしれない。
「……まぁ、期待しないでおこう」
 結局は、やはり同じように答えると、ダイゴも同じように「絶対に、絶対だ」とか力説してくれた。
 大体、本当に目覚めるかも判らないのに、ダイゴがスピリットになるのかも、果たして知れないというのに、心の片隅では、そんな時の訪れを期待している己がいるのを自覚し、また苦笑した。

 それもまた、ある意味では“未来”の姿なのかもしれない、と……。



 どれほどの時が経ったのだろうか。
 スピリットの目覚めとは、緩やかに取り戻した意識が、実体のない己自身を認識し、エネルギーが拡散しないようにと形作ることに始まる。
 無論、人としての姿を取らずとも、意識を保ってさえいれば、スピリットとして復活したことになるわけだが。
 目覚めを促されたということは“相棒”が呼んだということだ。自分が呼ばれたのならば、かつての後継者も、既にこの世には亡いということだろう。微かに切ない思いを抱きながら、己を強く保つようにして、そして、現在の世界の状況というものを解そうと務める。
 意外にも、前《さき》の戦いから、百年ほどしか経っていなかった。
 たった百年で、よもや“強き竜の者”を必要とされる状況になっていることに愕然とした。そして、すぐにブンパッキーの許に翔んだのだが……。

「何なんだ、あの連中は」
 キョウリュウジャーに変身し、戦っている連中がいた。ブンパッキーは自分を呼び起こしたはずなのに、何故か、キョウリュウグレーもいたりする。
 しかし、戦いといっていいものなのか──いや、戦いにもなっていないのは明らかだった。
 ついつい、嘆息してしまう。一応、変身はできているものの、その力を正しく使えていない。それも当然か。
「……放っておいて、大丈夫なんですかね」
 不意に横合いから声がかかった。スピリットに、何でもないように話しかけられるとは──生身の人間にもいないでもないが、声に聞き覚えがあった。
 しかし、まさか、と息を呑む。覚えのある声ならば、何れかの過去の時で、接触したことのある人間ということだ。今からなら、百年前に……。
「ブンパッキーが、物凄く困ってますよ」
「……真也。何故、お前までが此処にいる」
 間違いなく、かつて、後継者としてキョウリュウグレーの“銘”を託した子孫の青年。……まぁ、幾歳《いくつ》まで生きていたかは知れないが、姿は会った頃のものだった。
「何故って…。さぁ、何でなんでしょう?」
 訊いてるのはこちらだ、と突っ込みかけて、止めた。もう呆れるしかない。
「全く…。どこまでも、無意識な奴だな」
 無意識無自覚で、スピリットになるとは──思いが全てという奴ではあったが、その思いの力は半端なく想像以上だったということか。先刻の、らしくもなく切ない気分を返せ、と言いたい。
 苦笑で済ませ、当代のキョウリュウジャーたちを見遣る。デーボス軍の残党なのか? ともかく、敵が復活しているのも由々しき事態だが、それ以上に、その敵に軽くあしらわれ、何故か、正座させられた上に、説教を食らっているのが何とも物悲しい。
 真也も同じように感じたらしい。
「僕たちが力を貸せば、グレーの彼は相応に力を揮えるんじゃないですか」
「余り意味があるとも思えんな。勿論、俺たちなら、八番獣電池の力を引き出すことはできるが……。結局はそれだけのことだ。あいつらが戦えるわけじゃない」
 真也は困ったように頬を掻いた。
「今の賢神さんはどうして、彼らに今の獣電池を与えたんでしょうね。選抜そのものは間違ってはいないようなのに」
「さてな。詳しいことは判らん。ところで、真也。お前は何時、目覚めたんだ」
 どれほど、事態を把握しているのかと思ったが、彼は肩を竦めただけだった。
「貴方とそんなに変わらないと思いますよ。とにかく、ブンパッキーが助けを求めて、呼びかけてきたので、気付いたら、こういうことに」
 やはり、無自覚か。ブンパッキーも余程、困惑していたのだろう。まさか、自分だけでなく、後継者まで叩き起こすとは思わなかった。もう忘れたが、スピリットになるには、獣電竜の思いも或いは必要だったのかもしれない。
 そんなことを考えていたら、曖昧な記憶も刺激された。確か、「俺もスピリットになる」とか宣言してくれた奴がいたような覚えが……。


★        ☆        ★        ☆        ★


 思い出そうとしたからか、タイミングよく、次なる来訪者が。スピリットの許に現れるというだけで、正体は推して知るべしだろうが。
「よー、鉄砕! やっと見つけたー」
「……騒々しい奴が来たな」
「あ、酷ェな、久し振りだってのに」
 彼にしてみれば、そうだろう。しかし、あの別れの後に直ぐに眠り、今は目覚めたばかりの鉄砕にはそれほど、時間も経っているようには感じられない。
「あれ、ダイゴ君」
「あー、真さんだ。すっげぇ、真さんもスピリットになったのか?」
「どうも、そうらしいね」
「マジ、凄ェ。ブンパッキーの相棒は揃って、ブレイブだな☆」
 こちらは幾らか大人びた印象の、ガブティラの“相棒”にして、“地球のキング”は変わらぬ笑顔を振り撒いている。中身も全く、変わりはないようだ。決して、成長していないというわけではないだろうが;;;
 それにしても、妙に真也に纏わりついている。余程、予想していなかった『再会』が嬉しいのだろうか。案の定、
「鉄砕も嬉しいだろう。真さんとまた会えて」
 などと、同意を求めてくる。確かに、思わぬ『再会』に柄にもなく、胸が熱くなったのは否定しないが──しかし、それよりも気にかかったのは
「…………真さん?」
 呼び方が変わっている。やはり、自分の知らぬ時が彼らの間にはあるからこそ、なのだろうが。
「いつまでも、真也さんじゃ、堅っ苦しいじゃん。ノッさんもノッさんだったし」
 そういえば、真也の方もさっき、「ダイゴ君」とか言っていた。昔は年下にも拘らず、「さん」付けだったはずだが。
 翻って、自分は──同じ“激突の勇者”でも、頭の中身までが石頭で、取っ付きにくいだろうという自覚くらいはある。まぁ、その割には人懐っこい性分のダイゴは大して、気にもせず、近寄ってくる。元々、他人との距離が酷く近いのだろう。その辺も、スピリットになっても相変わらずか。

「それより、ダイゴ君。彼らのこと、どう思う? 他の獣電竜たちも、やっぱり困ってるのかな」
 今現在、最重要と思える指摘だ。ダイゴは全獣電竜と“相棒”同然に通じているのだ。
「うーん、まぁ、困らない方が変だよな。居心地悪そうだぜ。ブンパッキーの気分は真さんも解るだろ」
「うん。身悶えしてる感じかな」
「逆に、気付いてもらえないガブティラたちはさ、ちょっと怒ったり、嘆いたり、イライラしたりしてる」
「それじゃ、やっぱり、放っとくのはマズいかな」
 敵がいる以上、早く正しき力を揮えるように、導くべきなのかもしれない。
「ここは一つ、試練を……」
 例に拠っての魂の武闘殿《はこにわ》を取り出してみると、二人が黙り込んだ。
「問題はそこじゃないよな」
「獣電竜や獣電池との相性、だよね」
 “強き竜の者”ならば、“相棒”のものではない獣電池も使えはするが、変身《チェンジ》だけは別だ。当代のキョウリュウジャーたちはその点で、力の混乱を招いている。“強き竜の者”は本来、その精神──即ち、魂《スピリット》が“相棒”と強く深く結びついている。スピリットのみになっても、力を纏える所以だ。
 ただし、その肉体も精神の影響下にある。かつて、デーボ・モンスターに精神を入れ替えられたことがあったが、それでも、元々の肉体の力や技は使えた。当代の現状も、これに近いものだろう。
 しかし、昔の記憶のままに、ガシガシと髪を掻き回したダイゴは破顔一笑、
「まっ、大丈夫だろ。一応、ガブティラたちにはもっとブレイブに自己主張しろって言っとくわ。あいつらのことは、そんなに心配しなくてもいいだろ。何たって、俺たちキョウリュウジャーの血とブレイブを受け継いでる連中だかんな!!」
「……お前の孫だか曾孫だかが一番、問題ありそうだが」
「でも、もう一人は結構、強気っぽいですよ。より強く、タイゴ君とアミィさんの血を継いでるのかもしれないなぁ」
 結局、スピリットたちは直接に口も手も出さないことに決めた。敵を見るに、そのくらいの猶予はありそうだった。



「それにしても、あちらの方が気になる。デーボスを倒したのに、何故、残党が蘇ったのだ」
「やっぱり、ダイゴ君の言っていた謎の宇宙の悪神とかが関わってるのかな」
「かもな。でも、心配ないぜ。仮にそいつが現れて、地球を狙ってきたとしたら、そん時こそは俺も戦うからよ」
 力強い宣言に、二人の“激突の勇者”は見返した。
 すると、スピリットとなった“地球のキング”は不遜なほどの笑顔を浮かべた。
「俺はガブティラと地球にとことん、付き合うって決めたからな。地球の最後の瞬間まで、一緒にいるってな」
 鉄砕は無論のこと、隣の真也も絶句した。するよりないというものだろうか。
 そして、二人はダイゴに背を向け、顔を寄せ合う。
「地球の最後って……、どれくらい、かかるか解って、言ってるんですかね」
「さぁな。聞かないでおいてやるのが、情けというものかもしれん」
「つまり、解ってないって、思ってるわけですね」
 鉄砕は苦笑を一つ返したが、
「ま、こいつなら、あっさりとやってのけそうだがな」
 その昔、彼がまだ生者だった頃、「俺があんたを見送ってやる」と言われたのも思い出した。
 かつて、怖いもの知らずな子供は、知らぬままにいた弱さに気付くようになった。大切な仲間たちと共に激闘を潜り抜け、より強くなった。戦いを終えても尚、成長を続け、より強靭な精神を培うようにもなったのだろう。
 本当に、人間どころか、木々どころか、地球のスケールで、遥かな刻も越えてしまいそうだ。地球の最後とは、つまり、太陽の最後の爆発に呑まれる日のことだろう。もっとも、太陽が膨張すれば、爆発の前に生物は死滅するといわれているが。
 それでも、ダイゴはその地球に付き合うと言うのか。気の遠くなるような──恐竜の時代からの億を越える歳月すら、足元にも及ばぬような遥かな刻に、たった独り……。
 確かに、既に千六百年以上の時を渡ってきた鉄砕でも、想像などできない。だが、ダイゴにとっては最早、覚悟なども必要のないようなことなのかもしれない。
「……全く、ブレイブな奴だな」
「それで納めますか。まぁ、それしか、言いようがないですけど」
 真也に呆れられたようだが、気にはならなかった。

「そーだ、鉄砕。それより、約束だろ。手合せしようぜ」
 途端に雰囲気が一変する。ワクワクしているのか、初めて顔を合わせた頃のように幼さまで垣間見える。
「そんな約束してたんですか」
「こいつが勝手に言っているだけだ」
「えー、そんなこと言わずに、やろうぜ。楽しみにしてたんだからさ」
「そうですよ。いいじゃないですか。付き合ってあげたら」
「ならば、お前が相手してやればいいだろう」
「まさか。僕にダイゴ君の相手が務まるわけがないじゃないですか」
「謙遜するな」
「いや、謙遜じゃなくて」
「あー、でも、真さんともやってみたいな☆ 実は前からさ、真さんの幻術相手に、どこまで負けずに、立ち向かえるのかなって、思ってたんだ」
「ダイゴ君まで」
「凄いんだぜ、鉄砕。何か、あんたの幻術とは感じが違うんだけど、町一つ丸ごと、幻に引き込んじまったこともあったんだ」
「なるほど。精進したということか」
「ちょっと、ダイゴ君。あんまり盛らないで
「えー、別に盛ってないだろ」
 暢気に語らうスピリットの向こうでは、相も変わらず、当代のキョウリュウジャーたちが懇々と?敵から説教されていた。


オマケ

「真さんもずっと、スピリットのままでいるのか」
「さぁ、それは何とも」
「厄介な奴だ。無意識で、スピリットになど、なるな。散々、人には成仏しろとか言っていたくせに」
「はぁ、済みません」
「大体、成仏成仏というが、俺は浮屠《ふと》ではない。そもそも、成仏などせん」
「フトって、何だ」
「多分、仏教徒ってことかな。言われてみれば、もっともだけどね」
「かったいなぁ。言葉の綾ってもんだろ。いいじゃん、成仏は成仏で。な、真さん」
「だよね。ゴメンね、相変わらず、頗る固い頭で」
「お前が言うな!」

永劫篇


 てなわけで、番外編も完結です。何か、よもやで、真也さんまでスピリット化。どこまでも、無意識の挙句です^^; まぁ、番外編ということで、メインは鉄砕とダイゴですが。
 鉄砕がブンパッキーに付き合うと決めたように、ダイゴもガブティラや、果ては地球にまで付き合うとか激しく言いそうで★ 何たって、“キング”ですからね。
 まぁ、地球はともかく、他の獣電竜たちの“相棒”たちも案外、スピリットになって、その辺にいるかもしれませんけどね。
 本編後、彼らが過ごした時間を表現するつもりで、ダイゴたちの呼びかけ口調をちょっとだけ変えてみました。僅かに違いですけど、少しは親しくなれた感じを出せたかな、と☆

2015.10.20
(pixiv投稿:2014.04.25.)

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