『聖闘士星矢 小宇宙部屋開設四周年記念作裏話』 お礼SS No.98

 薄暗い格子部屋の中に、数名の男たちはいた。顔を突き合わせ、歯軋りをする。
「全く、こんな馬鹿なことがあるか」
「馬鹿げていても現実だ。それより、ラダンマティス様は大丈夫だろうか」
「余計な心配はするな。寧ろ、心配するべきなのは此処の人間たちの方だぞ」
 うーんと唸る一同。名の挙がったラダンマティスといえば、冥界軍の誇る三巨頭の一人だ。その主と引き離されてしまい、部下である彼らはハラハラしている。離れていても、抑えられた主の小宇宙がどんどんと強まり、怒りに染まっていくのが感じられたからだ。
 下手をすれば、彼らが捕らえられている、このビルごと吹き飛ばしかねない。
「バレンタイン。冥界への連絡は?」
「既に報せてある。だが、地上のことだ。聖域を通じて、何とかして貰うよりあるまいが」
「くそっ、こんな馬鹿げたことで、聖域に借りを作るなど! ハーデス様にもラダンマティス様にも何と申し訳の立たんことを!!」
 とはいえ、今は釈放して貰うには確かに聖域に頼るしかなかった。

 このビルはアメリカFBIのニューヨーク支局だった。とある用件で、この地に出向いた一行は何故か、どっかのマフィアだか何だかと間違えられて、逮捕連行されてしまったのだ。冥界軍でも特に畏れられたワイバーンのラダンマティス配下の冥闘士たちが、だ。
 無論、人間が幾ら多勢でかかってこようと、脅威になるはずがない。だが、地上では下手な騒ぎを起こすなと厳命されているので、大人しく捕まったのだ。
 尤も、いざとなれば、本当に実力行使で逃げるのも容易いためでもあろうが。
 とはいえ、ラダンマティス一人だけが事情聴取とやらに連れて行かれ、彼らは一纏めに格子の中……つまり、留置場に入れられてしまい、随分と経つ。本気で暴れたくなってくる。

「待てよ。そういえば、此処はFBIのニューヨーク支局だったな」
「何だ、今更」
「いや。今、思い出したんだが、聞いたことないか、新しい獅子座の黄金聖闘士の噂を」
「レオ? 獅子座のアイオリアのことか」
「違う違う。アイオリアではない。アイオリアは復活しなかったではないか。その後を継いだという新しいレオのことだ。そいつがアメリカのFBIだとかいう噂だ」
「あー、俺も聞いたことがあるぞ。そうだ。それも、ニューヨーク支局にいるとか」
「それでは此処ではないか」
 困惑気味で、顔を見合わせる冥界の猛者たち。
「……此処に、いるのか?」
「しかし、それらしい小宇宙を感じられるか?」
「いや。捜査にでも出ていて、今はいないだけかもしれんぞ」
 噂の真偽を確かめようのない彼らは自信なさげに、格子の向こうを見遣った。

「……にしても、聖闘士筆頭の黄金が捜査官とはな。アテナもよく認めたものだ」
「どうも、あの女神の考えることはぶっ飛んでいて、よく解からん。敵であるはずの我らの復活まで願うなど」
「理解しようもないのはアテナだから、と言うわけでなさそうだしなぁ」
 何となく、溜息をつく猛者たちだった。





『星矢・小宇宙部屋開設四周年記念作☆先出し後日談』 お礼SS No.102

 またぞろ、騒ぎに巻き込まれた友人と久々に再会した時、想像していたように、ゲッソリしていた。
「大変だったな」
 苦笑交じりに慰めの言葉をかけてみたが、地の底深く深くから響くような呻き声が湧き上がってきた。
「…………全くだ。ったく、レオを継承してからってもの、次から次へと……。聖衣ってのは、何か引き寄せるもんなのか」
「まぁ、ないわけじゃないな」
 アイオロスにしてみれば、少年の頃から、そういう生活なので、余りピンと来ない。
 友人──リアステッド・ローはブツブツと文句を続けている。
「よりにもよって、支局ビル内にだぞ。あぁ、暫くは仕事してても、何かの弾みで、思い出しちまう……。ったくぅ」
「まぁまぁ。何とか無事に解決できたわけだし──そうだ。冥界からも感状が届いたんだぞ。君宛に」
「感状? 感謝状みたいなもんか。意外にマメだな」
「感謝状って^^;;; ともかくな。どうやら、ワイバーンが冥王に進言したらしいぞ。気に入られたみたいだな、リア」
 悪戯っぽく言ってみるが、リアステッドの表情はそうは変わらなかった。
「俺も結構、気に入ったぞ。ワイバーン殿はド真面目っぽいけど、面白そうな奴だったな」
 冥王軍最強の冥闘士を相手に、あっさりとまぁ……本当に大した奴だ。
「聖域でも話題騒然だぞ。聖域開闢以来、初めてかもしれんな。冥王の感状が届くなんてな」
 もしかしたら、冥王も、この風変わりな黄金聖闘士に興味を持ったかのもしれない。
 “ガ=オー”の事件の際には居合わせた海皇も獅子座の黄金聖闘士の働きの一端を見届け、感心していたとか何とか、カノンから伝え聞いたものだ。
 それを当の本人は知らずにいたりする。心臓に悪そうなので、伝えずにいたわけだ。

「まぁ、お疲れ会ということで、今日は俺が奢るぞ」
 何がいい、と尋ねると、日頃は薄給だ薄給だと誘いに乗ってくる捜査官は「う〜ん」と悩んだ様子を見せた。
「どうした。リア」
「いや、何がいいかなぁ。とにかくさぁ、暫く、肉は食えそうにないし……」
「あ、そう。じゃあ、カレーにでもするか」
「何で、いきなりカレーだよ。つか、色がダメ。連想させんな」
「それじゃ、本当に何がいいんだよ。ヘルシーに野菜バーにでも行くか」
「……赤いのあったりしたらなぁ」
「それは慣れてるはずだろう。ロー捜査官?」
 『赤=血』がダメになったら、捜査官なんて、続けられないだろうに。
「今回ばかりはパス。俺、食うモンなくなりそうTT」
 悩める捜査官は深く嘆息した。当分、厳しい食生活に苦しみそうだった。





『聖闘士星矢・四周年記念作・今頃後日談』 お礼SS No.113

「ども、お久し振りでーす」
「お…、ドクター。本ト、久し振りだな」
 一時期は頻繁にクワンティコから、このN.Y.までやってきていたドクター・リードだが、突然、パタッと現れなくなった。落ち着きを取り戻したのだろうと、勝手に推測していた。
 BAUも色々あったらしいという噂は時折、届いていたが、リーダーな同期も結局、留任していたようなので、特に連絡は取らなかった。
 一度、彼らがこの支局に応援に来たこともあったが、俺たちは丁度、仕事で離れていたので、彼らには会えなかった。あの時は……N.Y.もとんでもない事件に席捲されていて、同期も巻き込まれたことを後で知った。何せ、支局長までが殉職したほどの大事件だったからな。

 しかし…、と改めて、ドクターを見遣る。相変わらず、線が細い学者タイプだが、以前よりは大人びた表情をしている。実際、目にすると想像以上の冷静さが備わっていて、幾らか驚いたものだ。
 それは我が相棒も同じだったようだ。
「何か、随分と男らしくなったなぁ。彼女でも出来たのかな?」
「やだなぁ、キャット捜査官。そんなんじゃないですよ」
 満更でもない様子だが、実のところは、さて、どうだろうか。
「んで、何だって、ド久々に顔を出したんだ? 足が遠退いていたのに」
 とりあえず、尋いてみるが、理由なんざ、真っ白なくらいに明白だった。
「あ、それですけど。お二人に是非、聞きたいことがあって──」
「何だよ」
「この支局に、ゾンビの大群が出たって、噂が実しやかに流れてますけど、真相はズバリ☆ どういったことなんでしょうか」
 インタビューするみたいにマイクを持ったように手を突き出してくる。
 わー、やっぱしなぁ。直球勝負で、きたなぁ。

「ドクター、どこで聞いたんだ? その噂」
 一応、民間に向けては緘口令を布くように、職員も指示されているが、何せ、わんさかとゾンビを目の当たりにしたのだ。映画のような非日常的光景が現実に眼前で繰り広げられ、精神的にヒビが入った職員も大量生産された。
 お陰で、局内のメディカルセンターも連日、大盛況ときた。今じゃ、カウンセラーの方が疲労困憊で参ってるという有様だ。彼らは外の嘱託医に相談しているらしいが、双方とも守秘義務があるのは同様だ。
「あ、医療関係者からじゃないですよ。他支部にも秘密にしたいでしょうけど、BAU《うち》は別ですから。症例として分析しろって、内々に命令があったんです」
「……分析って、また集団幻覚かもしれない……って?」
「まぁ、そんなところです。で、その場にいただろうお二人に、一応、話を聞いてこいって、ホッチが」
「あにぃ? ホッチナーの命令なのか」
 うげ〜、ドクターの興味本位だけなら、躱せるだろうが、ホッチナーまでが目を付けているとなると、取り込んだ方が早いか? 判断に悩むところだ。

「ロー捜査官、どうなんです。また見ちゃったんですか? ウィル・オー・ザ・ウィスプの時みたいに、やっぱり、X−FILEなんですか??」
 ドクターは不思議体験済みだからな。頭から、笑い飛ばしてくれる方が楽なのにさ。
 やはり、完全な嘘は通用しそうにない。BAUが内々とはいえ、正式の命令を受けたのなら、ホッチナーも前みたいになかったことにはしてくれないだろう。
「……なぁ、ドクター。ホッチナーは他に何か言ってたか」
「別に。──ただ、お二人の話を聞いてこいって」
 話あせるところだけ話せってことか。っても、聖闘士やら冥闘士やらのことを話せるわけがないしな。
 ジャックと目配せをし、改めて、ドクターと向かい合う。
「それじゃ、心して、聞いてくれよ」
「ゾンビがクワンティコを襲わんように、願わんとな」
「い゛?」
「ジャック…、茶化すなよ」
 脱力しつつも、真面目な話を始めた。

本編記念作



 『小宇宙部屋四周年記念作絡み拍手纏め』 『裏話』は草稿で、冥界側の視点で書いたものの、やっぱり『星影』はロー視点だと書き直したことでアブれたエピ。『先バレ後日談』は余りに本編完結までの時間が空きすぎてしまったので、穴埋め的に書いたような。
 『星影 with クリマイ』登場の天才ドクター・リード再登場。日本放送のS5では中々、落ち着いてます。ただ、輝一押しのホッチがエライ目に遭いまくりで、痛々しすぎるんですけど★

2008.07.31.

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