標なき奥津城《おくつき》


 ギリシャの夏は暑い。当然、聖域《サンクチュアリ》も例に漏れず──と思いきや、偉大なる女神《アテナ》の加護か、その小宇宙のために案外と過ごしやすい。
 実は避暑地の如く、更に快適にすることもできるが、それでは聖闘士や兵たちが外に出た時にバテかねない、という笑える理由で、夏は夏らしくなっている。……との噂だ。確かに夏バテの聖闘士など、この上なく笑え……ないだろう。
 さて、修行の賜物か、どれほどに暑くとも、汗一つかかず、涼しい顔で忙しない日々を送っているのは双子座《ジェミニ》のサガだ。夏になった途端、共に双子座を負うはずの弟が理由をつけて、海界に行ってしまったので、仕事は更に増える。確かに海将軍《ジェネラル》筆頭の海龍《シードラゴン》でもある弟カノンの海界行きを無理に止めることはできない。
 サガは溜息一つで済ませ、仕事に取りかかる。ブツブツ文句を言ったところで、片付くはずもなく、不毛なことこの上ないからだ。
 何かあるとすれば、それは弟が帰ってきてからになる。ただ、今回に限ってはそれも一時休戦されるだろう。何故なら、次に弟が帰ってくるのは一人の黄金聖闘士の誕生の日を祝うためだったからだ。
 そして、それに合わせて、普段は日本在住のアテナも戻ってくることになっていた。
 祝うべき、その相手は昔も今も、真直ぐに前を見据え、立ち続けている。
 十三年、要らぬ苦労をさせたが、それだけが救いとなっていた。
 こんなことが償いになるとは思っていないが──大体、当人も償いなど必要としていない──せめて、今年は盛大に祝ってやりたい。それはサガ一人の思いではなかった。
 特に乗り気なのは射手座《サジタリアス》のアイオロスだ。何といっても、祝うべき相手とはアイオロスの弟、獅子座《レオ》のアイオリアなのだから!
「十三年分、纏めて祝ってやらなきゃな」
 元凶《もと》は双子の確執から生じたといっても過言ではない、『暗黒の十三年』の被害を最も受けた兄弟だ。ただ、サガが申し訳なさそうな顔をすると、アイオロスはこう言う。
「拡大させたのは、或いは俺かもしれん。あの時にちゃんと向き合ってやれなくて、済まなかった」
 アテナのために、十四歳で落命した少年は、十分に大人の男になって、帰ってきた──些か不思議な話ではあるが。

 さておき、「サプライズ・パーティにするぞ」 と、どこで仕入れてきた知識だかは不明(もしかしたら、死んでる間?)だが、アイオロスが中心になって、弟を驚かせてやろうと準備中だった。
 そのため、サガには本来、アイオロスの果たすべき仕事まで回ってきて、忙しさ更に倍増★ アイオリアの誕生日までは、我慢するしかない。と己に言い聞かせ、教皇宮に籠もりっきりで黙々と書類を捌く。

「あれ、兄さんは?」
 上がってきた当のアイオリアが何も知らずに首を傾げ、次いで眉を顰める。
「また、サボりか」
「いや、そういうわけではないんだ。アイオロスに用か」
「来月の特別訓練計画を立案してきた。一応、目を通して貰いたい」
 数部の冊子が提出される。パラパラと簡単に目を通すと、中々、細かに纏められている。
 十三年、黄金聖闘士であることも秘して、中央の執務に携わることもなかったためか、デスクワークは苦手にしているアイオリアだが、生真面目で努力家な質が補っている。経験さえ積めば、十分に熟せるようになると見られていた。
「問題はないと思う。お前の判断で、進めてくれ」
「いいのか? 兄さんの判断も仰がずに」
「候補生たちを直に良く見ているお前の判断を第一にすべきだろう。何も問題はない」
「了解った。では、そのように……。で、兄さんはどこに」
「え?」
 また話が戻るとは思っていなかったサガは反応に迷った。すると、兄に似た顔が思い切り顰められる。
「やっぱり、サボりか」
「いや、アイオリア。違うんだ」
「サガは兄さんに甘すぎるぞ。ガツンと言ってやれば、いいんだ」
 サガは苦笑するよりなかった。今、“英雄”アイオロスに一番、厳しいのは誰あろう、この生真面目な実弟だったりする。

「そ、それより、アイオリア。もうすぐ誕生日だな」
「え…。あぁ。まぁ、そうだな」
 話を逸らせるにしても、サプライズ・パーティのことを気取らせるわけにはいかない。マズいネタを持ち出したと悔やみつつも、アイオリアの淡白すぎる反応にも些か、拍子抜けする。
「何だ、随分と気のない返事だ」
「子供でもあるまいし、一つ年を食ったからといって、騒ぐほどのこともあるまい」
「アイオリア……」
 ただ、困惑を僅かに滲ませたのをサガは見逃さなかった。だが、
「では、失礼する。こちらは任せて貰う。あぁ、兄さんを見付けたら、引きずってくるから」
「え? あー、それは……」
 皆まで言わせず、退出していってしまう。

 十三年分の澱は簡単に払われることはないのだ。
 未だ、口数の多い方ではないアイオリアが苦言を呈するのは兄アイオロスくらいだ。今や、聖域の英雄殿に物申せる者が少ない……というより、殆ど皆無に等しいためもあるのか。
「あいつは俺に、文句しか言わない」
 などと、アイオロスが愚痴を零すほどに遠慮がない。原因を作っておいて、愚痴るなと言いたいところだが、意見されるのは聖域のためにも歓迎するが、普通に兄弟としての会話も欲しい、ということなのだろう。
 アイオリアが言いたいことを言う相手としては他にムウがいるが、ムウとの間には論争になるだけでなく、友人としての普通の会話も成り立っているのだ。
 だから、余計に微妙な擦れ違いに居心地の悪さをアイオロスが覚えているのも解らないでもない。それに、先刻、垣間見せた困惑も気になる。

「アイオリアが?」
 戻ってきたアイオロスが顔を顰めた。コト、弟に関しては昔のままといってもいい。長く苦労させた分、尚大事にしてやりたいという兄心だろうが、傍目にも当の弟は迷惑がっているのは物悲しい。
 まぁ、二十歳も過ぎて、兄に一々、構われるのは当然、鬱陶しいだろう。客観的に見れば……兄の側の主観に於いてはまた話は別だが。
 それはともかく、
「もしかしたら、余り大袈裟に騒ぐのは好まないのではないか」
「しかし、黄金聖闘士の誕生日を祝うのはアテナの意向でもあるんだぞ」
 『聖戦』の終結より、必ず一月に一度は回ってくる黄金聖闘士の誕生日に、聖域中が無礼講で騒ぐのはお楽しみにもなっているのだ。適当なガス抜きでもある。
「アイオリアだって、今度の誕生日が肴にされるのは疾うに承知のはずだ」
 今更、嫌がったり、逃げたりするとも思えない。
「それはそうだろうが……サプライズ・パーティはやりすぎにならないか」
「大丈夫☆ ちゃんと楽しんでくれるさ。いや、楽しませてやる」
「自信満々なのは結構だがな」
 溜息が止まらない。すると、ポンポンと肩を叩かれた。顔を上げると、お気楽なまでの親友の笑顔が……。
 全く、双子とも勘違いされるほどのそっくり兄弟のくせに、この表情の違いはどうだ。
 幾らそっくりでも、サガとカノンが間違われないのと同様、アイオロスとアイオリアも面差しが似ていようと雰囲気が全く違うために、今では間違われることは滅多にない。
 その楽天的な兄が叩いた肩をいきなり揉み出した。
「ホーレ、肩の力抜けよ。気に病み過ぎなんだよ、お前は」
「お前が気にしなさ過ぎなのではないか? お前の弟のことなのだぞ」
「だからこそ、さ。確かに今となっては俺が一番、あいつを解っているなんて、言わんがな」
 顔が反射的に歪む。それがサガの性分なのだ。
「まーた、そんな顔をする。なぁ、サガ。一人だけで考え込みすぎて、グルグル回るんじゃないぞ」
「グルグルとは何だ」
「行き着く先もないってことだ。昔から、お前は何でも、一人で背負い込みすぎる。そりゃ、ガキの頃の俺たちは本当に当てになんかならんかったかもしれんが……今もそう思えるか? だとしたら、一寸傷付くぞ」
「……いや、そんなことはない」
 そうだ。本当はあの頃とて──当てにしていた。間違った方向で頼ろうとした挙句、この親友を死に至らしめた。
 何人もの仲間を傷付け、聖域を混乱させ──破滅で終わるしかなかった。
 その所業はたとえ、女神に寛恕《ゆる》されたとはいえ、己は決して忘れまい。
 あの痛みを……。

「とにかく、アイオリアのことは俺に任せておけ」
「解った。それがいいのだろうな」
 結局のところ、彼ら兄弟の絆は何物よりも強いのだとは証明されている。
 だが、次には表情を改める。サガにしては珍しく少々、意地が悪そうだった。
「アイオロス。アイオリアに会ったら、説教される覚悟はしておくのだな」
「説教!? 何でっ」
 素っ頓狂な声に、更に悪戯心が湧く。
「お前がまた、サボっていたと思ったようだぞ」
「何だよ、それは」
 サボっていたわけじゃないと、顔に大書きされているが、
「仕事していなかったのは事実だろう。何をしていたと問われて、正直に答えられるのか」
 答えられるわけがない。唸るアイオロスに、余り同情はできない。
「そもそも、身から出た錆だろうが。日頃の行いの為せる業だぞ」
「う〜っ。最近のリアときたら、本当に説教しかしないんだぞ」
 げんなりと呟くアイオロスは逃げたくなった。

 その日、射手座のアイオロスは七歳も年下の弟に、こっ酷く説教されたそうな。そして、三日ほどは沈没していたとか何とか^^;;;


☆        ★        ☆        ★        ☆


 獅子座の季節《とき》──それは正しく、太陽の季節でもある。灼熱に輝く光輪の下、世界は照らし出される。
 その天空の輝きを守護星とする獅子座の黄金聖闘士が如何なる苦境にあろうとも、輝きを失わなかったのもなるほど、頷けた。
 そして、この日は獅子座のアイオリアがこの世に生を享けた日だった。
 女神の聖闘士として、射手座のアイオロスの弟として、戦い、生きるべく、命を得た獅子座の魂……。
 思わぬ逆境に曝されながらも、決して折れなかった毅き心の持ち主は、一年に一日だけのその日も常と変わることなく過ごしていた。
 教皇宮に登る日でなければ、自身の鍛錬の後は聖闘士候補生や、請われれば、最近では兵たちの訓練指導にも当たっている。結局、体を動かすことが一番、性に合っていると当人は思っていた。
 以前より、指導を望む声が多くなっただけで、基本的には何も変わらない。

「よし、今日はこれまで」
「ハイ。ありがとうございました!」
 幼さの残る声が唱和する。
 太陽は高々と天空を巡り、南中しようとしていた。さすがに、この季節に真昼に外で、ひたすら修練させては、まだまだ体の出来上がっていない少年たちには危険ですらあった。小宇宙をもっと自在に扱えるようになれば、体力の消耗を抑えたり、体温調整すら行えるようになるだろうが、少年たちにはまだ早い。
「宿舎に戻ってからの柔軟運動を忘れるな。それと、水分補給もな。あぁ、水だけは駄目だぞ」
 この季節になってからは毎日のように、何度も何度もクドいほどに念を押す。
 嘗ては「倒れるなぞ、根性がない証拠」などと無茶苦茶な論理が罷り通っていたが、女神の帰還はそんな旧時代的弊害も見事なばかりに奇麗に払拭してくれた。
 アイオリアも経験的に知ってはいたが、きちんとした『スポーツ科学』を学ぶ機会も得て、目から鱗が落ちる思いだった。

「後は頼むぞ」
「ハイ。アイオリアさん」
 後の監督は最近、青銅聖衣を得た少年に一任する。まだまだ駆け出しだが、それでも、八十八人の聖闘士の一人だ。信頼に値する。
 その力強い返答に頷き、闘技場を後にしようと背を向けたが、
「あ、あのっ、アイオリアさん」
 呼び掛けに振り返ると、青銅聖闘士の少年を中心に候補生が全員、集まってきている。
「どうした」
 何か質問でも──と言いかけた瞬間だ。
「お誕生日、おめでとうございます!」
 見事な一致団結振りに、アイオリアは目を瞬かせた。
「……え…」
「今日は誕生日ですよね」
「あ、あぁ…」
「いつも、お世話になってますし、何かプレゼントをって皆で考えたんですけど、物より、こういう方が良いかなって思って」
 青銅の少年が照れ笑いを浮かべながら、身構えた。そして、小宇宙を高め出す。他の候補生も一斉に、出来得る限り、その身の小宇宙を燃やす。
「ハァッ!!」
 溜められた力が蒼穹《そら》へと一気に打ち放たれる。数十人分の小宇宙は高みを目指し、一つに纏まり、もう一つの輝きを生み出した。
 太陽には及ばぬまでも、その瞬間、聖域には確かに地上を照らす光輪は二つあった。

「まだまだ未熟もいいところですけど、俺たち、獅子座のアイオリアの弟子だって、胸を張って言えるように頑張ります」
 ……弟子、か。無論、彼らの全てと正式な師弟の契りを結んだわけではない。今尚、アイオリアは弟子を採ってはいない。一人の者に手取り足取り教えるよりは、多くの者の基礎をきっちりと見てやりたかったのだ。
 薄らいでいく光を見上げながら、目頭が熱くなるのを感じた……。
「あぁ…。期待している。素晴らしいプレゼントだよ」
 本当に、少年たちの心根が何よりも嬉しかった。


 この日が獅子座の黄金聖闘士の誕生日であることは知れ渡っていた。夜には月一のドンチャン騒ぎ──もとい、月一黄金誕生会も予定されているのだから、当然か。
 その後も時々、呼び止められては祝いの言葉をかけられた。それは一年前までとは全く異なり──正直、内心では戸惑っていた。
 あの頃、“逆賊の弟”だったアイオリアはただ、そこに在るだけで憎しみをぶつけられ、謗りも受けた。無視されるのが本当にマシな方だったのだ。勿論、アイオリアは抵抗も反撃もせず、されるがままで、全て耐えた。
 だが、この日だけは──誰にも会いたくはなかった。受けるべき祝詞《ことば》もなく、詰られ続けるのでは、さすがに心が折れそうになってしまう。
 そうして、足の向く場所は決まっていた。
 ふと、その光景が甦る。独り心を慰めた、あの場に──最近は全く行っていない。当然だ。行く必要がなくなったからに他ならないためだが、今となると、懐かしくもある。久々に、行ってみようか……。
 十二宮に向かっていたアイオリアは暫し考え、踵を返した。


★        ☆        ★        ☆        ★


 アイオリアがやってきたのは聖域の外れ──アテナ結界に囲まれ、常人には目にすること叶わぬ聖域の外縁部、境界ともなるべき森だった。
 外から迷い込んでも、通り抜けることは不可能で、『惑いの森』などと呼ばれている。
 無論、聖域の住人──しかも、聖闘士であるアイオリアが迷うはずはない。それこそ、迷いのない確りとした足取りで、森の奥へと足を踏み入れる。
 抜ければ、外の世界が待っているが──この森を抜けようとしたことは一度としてなかった。入れば、目的地は一つだけ……。

 鬱蒼とした森が突然、開けた。見上げれば、ぽっかりと空いた木々の向こうに、緑に切り取られた蒼き空。薄暗いはずの森を輝かせる射し込む光も外よりは緩やかに感じる。
 開けた地も他とは趣が違う。所々を彩る夏の花が数種類、吹き下ろす風に揺れていた。
 アイオリアは懐かしげに、森の中には異質な空間を見回し、再び足を踏み出した。踏み締める柔らかな草も、ここに至るまでとは異なる感触だ。
 そうして、足を止め、見下ろした先には背の高い草木に埋もれて、小さな石が顔を覗かせていた。
「…………久し振りだな、兄さん」
 呟くように、声をかける。それも又、習い性だ。
 膝をつき、草木を掻き分けると、石の全容が露になる。何の変哲もなく、どう見ても、そこらに転がっている石と似たり寄ったりだが、幾らか丸くなっているのは長き風雪によるものか。
 それは、あの忘れようもない『事件』の後、幼いアイオリアが亡き兄のために密かに設けた墓石だった。
 誰も訪れることのない森の奥に、僅かに空の見える場所を見付け、幼子の小さな手で地を掘り、石を運び──兄を偲ぶ唯一の縁《よすが》としたのだ。
 勿論、万一を案じ、名を刻むこともなく、此処に至る道標すらない。ただ、アイオリアの記憶にのみ刻んだ兄の墓だった。

「悪かったな、全然、来なくて。でも……今日は誕生日だから」
 墓石の前に座り、手にしていたクーラー・バッグから取り出した瓶を置く。
「兵に貰ったんだ。誕生日プレゼントだそうだ。俺が生まれた年のワインなんだ。味の良し悪しなんて、判らないけど、気が利いているよな」
 途中、渡されたものだった。集団で現れた相手には結構、酷い目に遭わされた。その全てを一々、覚えてはいないが、記憶に残るようなことをしてきた相手であるのは確かだった。
 『十二宮の戦い』以後は全く近寄らなくなっていたのに、どんな思いで、このプレゼントとやらを用意したのか。
 本心から祝ってくれているのか、取り繕うためか、未だに報復を恐れているのか──人の心など、量り切れるものではないことは疾うに承知している。
 ただ、過去ばかりに悩まされても、未来がないだろうことは確かだった。だから、アイオリアはそのプレゼントだというワインを受け取ったのだ。
 尤も、皆が皆、酒を用意してくるのには困ったが。飲めないわけではないが、どちらかといえば、酒嫌いで通してきたのに、どういうわけだ? もしや、兄との飲み会で唆されたのか。
 などと、疑問もあったが、その中から一本だけ、有り難く頂戴した。残りは「祝ってくれるのなら、今日飲んでくれ」とか言いながら……。

「候補生たちも嬉しいことを言ってくれた。俺の、獅子座のアイオリアの弟子だってさ。兄さんに散々、扱かれた俺が教える側に立ってるんだ」
 少しだけ強い風が髪を嬲った。まるで、風神の名を冠した兄が返答のするが如く……。
 不意に我に返り、苦笑する。
「何…、やってんだろうな、俺は。……兄さんは今、教皇宮にいるのに」
 髪を掻き回し、嘆息する。
 身に、心に染み付いた習い性──ただ、それだけだ。あの十三年の決して、忘れられない思いをなぞってしまう。
 結局、その『過去』から解き放たれることなどあり得ない。忘れるつもりすらない。
 今日で二十一を数える人生に於ける十三年──ほぼ三分の二を占める時をどうして、忘れられよう。なかったことになど出来るわけがない。
 そんなことをされたら、これまでの人生の殆どを否定されることになるではないか。

「あぁ…。それを確めたかったのかな、俺は」
 縛られるのではない。ただ、確りと見据えて、その上で引きずられないように向き合いたい。
 アイオリアはその場に寝転がった。木陰のため、かなり涼しい。午後は自主練のつもりでいたが──優しい風に眠気を誘われる。
 幼い頃もよく此処で過ごした。十二宮も出され、何処にも居場所のない彼が唯一、安息を得て、眠れた場所。
 この下に兄はいないと誰よりも承知していながら、その兄の面影を夢見た“墓”の傍ら……。
 次第に日は傾いていくのだろうが、森の中では経過が判りにくい。アイオリアは何にも邪魔されない心地好さに寝入っていた。


「リア……。おい、アイオリア。起きろ」
「──……」
 揺さぶられれば、嫌でも目覚める。常ならば、人が近付いただけで飛び起きそうなものだが、今日という日、この場所、そして、相手──例外中の例外だった。
 意識が覚醒してからも跳ね起きなかったのは、傍らの気配と小宇宙が誰よりも近しい者だったからだ。
「……兄さん」
「兄さんじゃないぞ」
「あぁ…。今、何時……」
「三時ちょい前だ。いつから、こんな処で寝こけていたんだ」
「……。腹、減ったな」
 兄が嘆息したようだ。
「昼も食わずに寝ていたのか」
「みたいだな」
「みたいじゃないぞ。寝惚けてるのか。大体、俺が起こすまで、ピクリともせんとは気を抜きすぎだ。敵だったら、どうする」
 最近、文句ばかり言われていたせいか、逆に叱れるのが嬉しいのだろうか。何だか、喜々としている。
「敵だったら、近付く前に飛び起きていたさ。兄さんだったから……」
 一寸だけ、兄が言葉に詰まったようだ。何度か咳払いをしている。
「しかし、何でまた、わざわざ、こんな処にまで来て、昼寝なんだ。──お、何だ、これ。って、ネメア・リザーブじゃないか!」
 置いておいた瓶のラベルを見た兄が何故、騒ぐのかが解らない。
「ネメアが珍しいのか」
「ただのネメアじゃない。我がギリシャワインの大傑作。中々、手に入れられない逸品だぞ」
「そうなのか」
「お前…、本ト、こーゆーモンに興味ないのな」
 呆れたような兄だが、アイオリアに言わせれば、戦士たる聖闘士が直接知る必要はない知識だ。必要があるのなら、専門家に選んで貰えばいい。
「それじゃあ、こいつを用意した連中が気の毒だぞ」
 興味がない、無関心。どちらかといえば、酒嫌いな弟が自分で用意するわけがない。この手応えのなさには苦笑するしかない。兄もそれが弟の性分だとは承知しているのだ。
「そうでもない。十分、有り難いと思っているさ。それ、二十一年前の物だってさ」
「へぇ。あぁ、それじゃ、誕生日プレゼントなのか──待て、昼から、ここに置きっ放しかっ」
「そうだけど……」
「嘘だろうっ! 熱にやられちまうじゃないかっ」
 悲鳴に近い叫びを上げる兄に、辟易する。
「一応、クーラー・バッグには入ってたけど」
「出してから、二時間以上経ってるんだろう。あぁ、何てことだ。酸化しちまってるかもしれん」
「ここはまだ涼しいから、大丈夫だと思うが。俺も傍にいたから、小宇宙の影響を受けていると思うし」
 水と氷の魔術師《カミュ》ほどではないにせよ、彼ら黄金聖闘士ほどの実力者は小宇宙によって、体温だけでなく、周囲の気温もある程度はコントロールできるのだ。全く、小宇宙万能世界である。
「そうであることを祈ろう。折角のネメア・リザーブが台無しになったら、泣くぞ」
「……大袈裟な」
「何を言う! リザーブは正に、ディオニュソスが人に下された神の恵み。一滴たりとも、疎かにすべきではないっ!!」
 何だか、力一杯力説しながら、その傑作ワインをクーラー・バッグに戻し、更に自らの小宇宙で冷却までさせる兄を、寝転がったまま、ボンヤリと見上げる。
 ずっと独りで過ごした兄の“墓”……。その前に、当の兄が座っているなぞ、とても考えられなかったことだ。正に奇蹟……。
「にしても、何なんだ、此処は。この森にこんな場所があったとはな」
 確かに不思議かもしれない。だが、辺りを見回す兄に何と言えばいいのか。

 最初は何もなかった淋しい場所だった。だが、時折、持ってきては供えた花が種を落とし、何時しか、どの季節でも周囲を彩るようになった。射し込む僅かな陽光《ひかり》のおかげで、此処は淋しくなくなった。春から夏には蝶なども飛来し、目を慰めてくれた。
 そう、十三年をかけて、貴方のためだけに作り上げた“慰霊の地”なのだと……。

「ん? 何だ……」
 惑っている内に、何かを見つけたらしい兄の声が上がる。微かに途惑いを含むのに、目を遣ると、手が何かに触れたらしく、見入っている。
 あぁ、見つけたのか……。
「アイオリア。この石は──お前の小宇宙が籠められているが?」
 風雨に曝され、また、アイオリアが触れ続けた墓標は丸みを帯び、そして、長い年月をかけて、そのアイオリア自身の小宇宙も宿るに至った。尤も、意識的に籠めたわけではないので、それも微かなもの。注意深く探らなければ、判別は難しいだろうが。
 考え込んでいた兄が僅かに身を引いた。
「リア。これは…、もしかしたら、俺の、墓か?」
 確めるように、尋ねる言葉は傍で聞いていれば、異様なものだったろう。
 だが、兄は至極真面目な声で問い質す。最近では滅多に聞けないような真剣な声で……。見返せば、その表情も目も真剣そのものだ。
 転がったままのアイオリアは森に切り取られた青空を見上げ、目を細めた。
「……あぁ」
 兄が、射手座のアイオロスが何とも表現しようのない表情を浮かべた。その一瞬に、何を考えたのだろう。


☆        ★        ☆        ★        ☆


 “逆賊”とされたアイオロスの遺体は結局、見付からず、打ち棄てられたも同然だったに違いない。勿論、実弟のアイオリアも関与を疑われ、暫く拘束されており、探しに行くことなど叶うはずもなかった。
 それどころか、兄アイオロスの全てが“禁忌”の名の元に封じられた。
 直ぐに十二宮も出されたアイオリアは人馬宮にも獅子宮にも立ち入れず、兄の遺品と呼べるものすら手にできなかったのだ。
 ただ、それは後に、先回りして、可能な限りの品を持ち出し、保管してくれていた人馬宮の隣宮である天蠍宮の幼馴染たちのお陰で、何もかもを失わずには済んだ。
 また、女神への叛逆者が慰霊地に墓標のみとはいえ、葬られるはずもなく──アイオリアは自ら、兄の墓となるものを立てたのだろう。
 日々、痛めつけられた小さな体で、小さな手で、この小さな、密やかな空間に懸命に……。
 叛逆者の墓など見付かれば、空であっても暴かれ、破壊され、作った者もどんな目に遭うか想像するに難くはない。

 幼い弟が必死に此処に備えた墓石に傷だらけの手を合わせている様が目に浮かぶ。
 成長し、無骨な手が小さな花を墓前に供える様も……。

 甦ってからは万事、明るく振舞い、聖域の人々の心の重石を取り去ることに成功しているアイオロスだが、辛酸を舐めた弟のこととなると、慎重にならざるを得ない。
「……よく、来てくれていたのか」
「ガキの頃はな。此処だと、よく休めたから。でも、段々と来なくなったな」
「何故?」
 来たくなくなったのか、との問いを危うく飲み込む。
 そんなアイオロスの動揺を知ってか知らずか、アイオリアは淡々と続ける。
「触れは出されなかったが、獅子座の拝命を受けてからは、任務やらで忙しくなったんだ。それでも、年に三回だけは聖域にいれば、必ず此処に……」
「三回?」
「俺の誕生日。兄さんの誕生日。それと…、兄さんが──」
 呑み込んだ言葉の先は明らかだった。“逆賊”として、自分が死んだ『あの日』か……。
 アイオロスは弟がどんな思いで、骨の一欠片すら拾えなかった兄の墓標の前に立ったのか、全く想像も出来ない自分を悲しく思った。弟の味わった悲哀も苦痛も、自分は今、共有してやれないのだ。
「聖戦が終わってからは当たり前だが、来ていなかったんだ。今日は俺の誕生日だから、つい、ね。もう習慣みたいなものかな」
 苦笑に紛らわせても、痛みが未だに燻っているのはアイオロスにもよく判った。サガの言葉も甦る。やはり、十三年分の凝《しこり》は大きい。簡単に除けるものではなかった。
 サガには自信たっぷりに請け負ってみせたくせに、弱気にもなる。何事に於いても、楽天的で前向きなアイオロスにとって、この弟は唯一、安易に接することのできないアキレス腱にも等しかった。

 一度、『自分の墓』を見遣り、ドッと弟の隣に転がった。
 騒く《ざわめく》木の葉の向かうに見える蒼穹……。吹き渡る風の色、光の煌きが美しい。
「好い処だな。よく見付けたな、こんな絶好スポットを」
 返事は、なかった。それこそ、偶然だったのだろうと思える。もしかしたら、女神のお導きだったのかもしれない。ほんの僅かな合間など、十三年の内に木々が生長すれば、閉ざされてしまいそうなものなのに──それもまた、奇蹟か。
 暫くは兄弟とも無言だったが、
「このままでも良いのか、兄さん」
「え? 何がだ」
「自分の墓なんて、嫌じゃないのか」
 現に冥王との戦いの前に火まで掛けられた慰霊地は復されたが、復活した聖闘士たちの墓碑はさすがに外されたのだ。
「良いさ、このままで」
「でも……」
「お前の大事な思い出なのだろう?」
 そうであって欲しいという願いもあった。女神を救うためとはいえ、弟もまた女神のために命をも捧げる聖闘士とはいえ、選択すらさせずに、苦境に放り込む結果となったことだけは未だに悔やまれた。
 憎まれても仕方がないものを、弟はこの兄を偲ぶ地を密かに作ったくれたのだ。誰が嫌などと思うだろうか。
「そう……」
 小さく呟き、弟はまた黙り込んだ。

 アイオロスは体を返し、そんな弟を抱き締めた。最近ではこういうスキンシップもなかったせいか、弟の全身が強張るのを感じた。
 アイオロスはやはり黙って、小宇宙だけを弟と同調させる。全てを語る小宇宙を……。
 やがて、弟からの応え《いらえ》があった。オズオズと動いた両の腕が背中に回されてくる。
 同調する小宇宙に乗って、心が伝わってくる。悲しみを帯びた想いが……。

 誰より近しい兄の小宇宙が喪失《うしな》われ、暗闇よりも真暗な絶望に叩き込まれた弟の、それでも、記憶の中の光を追い求めた十三年という刻を……。
 誰よりも亡き兄に祝って貰いたかったこの日を、独りこの場で過ごしすしかなかった十三年。
 この喪失われたはずの小宇宙が神々の奇蹟により、直ぐ傍らにある今尚、苛む闇への畏れや不安を拭いきれない。
 距離を取りたがる弟の胸の内をこの瞬間、初めてアイオロスは知ったのかもしれない。
「大丈夫だ、アイオリア。俺は此処にいる」
「──」
「此処にいる。だから、案ずるな」
「……ッ」
 『嘆きの壁』の前での再会で、一度だけ見せた涙……甦ってからは決して隙を見せなかった弟の心の壁が今、崩れた。
 幼いあの頃に戻ったように、声を上げて泣く弟の髪を何度もあやすように撫でてやる。それ以上は言葉もなく、ただ、小宇宙だけを……それだけでいいのだと、やっと気付いた。


 何時しか、声が静まり、震えていた体も落ち着きを取り戻した。
 もう、我慢してしまうのかと嘆息しかけたが、
「何だ、また眠ったのか」
 泣き疲れて眠るなぞ、赤子のようではないか。
 クスクス笑いながらも、立派に成長した弟に残る幼い一面に、兄としては頬が緩む思いだ。やはり、幾つになっても『弟は弟』だった。
 これで目覚めれば、弟は真赤になって、忘れてくれと言うかもしれないが、勿論、忘れてやるつもりなどない。暫くはこれで、説教されることもないかもしれない、などと考える辺りは光速の拳骨が落ちてきても文句は言えまいが。

 抱いていた腕を緩め、だが、添寝をするように向き合い、涙で貼りついた髪を払ってやった。
「誕生日、おめでとう。アイオリア」
 物より何より、サプライズ・パーティなどで驚かさなくても、自分の存在が祝いになるのならば──今日は傍にいるよ。
 アイオロスは弟の肩をそっと叩きながら、自分も目を閉じた。

 吹き下ろす風が草木を、花を、兄弟の髪を優しく揺らし、光の残滓を巻き込みながら、蒼穹へと帰っていった。



「何処に行ったんだ! あの二人はっ」
 いい加減、サガがキレる寸前なのに、周囲の者は距離を取る。巻き込まれるのは御免だ。
「しかし、主役と幹事の両方がいないってのは何なんだよ」
「時間までアイオリアの足止めをするって、出て行ったんですがねぇ。幹事さんは」
 足止めどころか、兄弟揃って、消息不明になってしまった。勿論、小宇宙の探知もかけたが、聖域内にはいるはずなのに、居場所が特定できない。
 そうこうしている内に、『今月の黄金聖闘士誕生パーティ』の開始予定時刻になってしまった。
「仕方ありませんわね。パーティだけ、始めましょうか」
 のんびりと沙織が言うのに、サガが慌てて、制する。
「で、ですが、祝われるべき当人がいないのでは……」
「皆の気持ちが大事なのではありませんか? アイオリアを祝いたいという気持ちが。大丈夫。その内、大慌てて戻ってきますよ。二人とも」
 自信たっぷりな女神様に一同は顔を見合わせる。もしかしたら、沙織は二人の居場所に気付いている上で、そっとしているのかもしれない。
「……そうですね。戻ってきたところで、おめでとうと言ってあげれば良いですね。勿論、文句は忘れずに」
 ニッコリ言いながら、サッサとグラスを取るムウに、ミロも同調する。
「そうそう。兵たちも騒ぐのを楽しみにしてるんだからさ。あんまり待たせちゃ、暴動が起きるかもしれんぞ」
「そこまで、溜まってはいないと思うが」
 カミュも苦笑したが、反対はしなかった。
 そうして、残らずグラスを手に取る。サガも息をつき、疲れたようにグラスを持つ。
「兄貴。何て顔をしているんだ。祝いの場なのだから、もっと明るい顔をしたらどうだ」
「煩い。面倒は全部、俺に押し付けて、こういう時だけ帰ってくるお前に何も言われたくはない」
「ハイハイ、悪かったって。一週間はこっちにいるから、手伝うって」
「手伝うではなく、元々、お前の仕事だっ」
 カノンは文句が止まりそうにない兄の頭を抱え、無理矢理口を塞いで、黙らせた。今正に、女神沙織が音頭を取ろうとグラスを掲げたのだ。
「では──ちょーっと、当人いませんけど、私たちの獅子座がこの世に下されたこの日を祝して、乾杯!」
「乾杯!!」
「おめでとう!」
 盛大な唱和に、喧騒の宴は始まった。

 ……当人いませんので、サプライズも何もあったものではないけれど^^;;;


 その頃の兄弟☆
「イタタタタ」
「当たり前だ。腕枕なんかしたまま、寝たりするから」
「だって──お前が子供の頃はよく、やってたし」
「ガキの頃と一緒にするな。大の大人の下敷きになってたら、痺れるのは当たり前だろうがっ。気付けよっ」
 うわっ、命令形だ。全然、遠慮がない。というか、余計に遠慮がなくなっている? だとしたら、物凄い大誤算だ。一度、曝け出してしまったから??
「それより、兄さん。早く戻らないと」
「そうだな。お前の誕生パーティもあるし」
「じゃなくて! アテナがお帰りになられているだろうがっ! 教皇補佐が出迎えなくて、どうすんだよっ」
「どうもこうも、もう過ぎちゃったことだし」
 ギンッ★ 生真面目な弟に思いっきり睨まれ、本気で怯んでしまった。こ、怖い…;;;
 とっぷりと暮れた闇の中で、底光りする獅子の眼光に、マジにビビる。よくまぁ、星矢はブチ切れたこいつから逃げなかったなぁ。
 振り返りもせず、さっさと先を進む弟を慌てて、アイオロスは追いかけた。
「サガにも怒られるだろうな」
「当たり前だ。覚悟しておくんだな」
「ハァ……」
 さすがに溜息が重くなるが、
「大丈夫だよ。俺も一緒に怒られるから」
「アイオリア?」
「一緒に寝こけていたのは間違いないしな。俺も、アテナを迎えられなかったし」
 月一の黄金誕生パーティがあることだけは知っていたのにスッポかしたし……。などと、先を行きながら、上げていく。こちらを振り向いてはいなかったが、照れているのは間違いない。
「あぁ、一緒に怒られようか」
 それから、お祝いだ。やはり、自分だけでなく、皆にもこの弟が生を享けた特別な日を祝って貰いたい。


 あれほど、眩く燃えるような天空の王者は何時の間にやら、姿を消し、代わりに麗しき夜の女王が御座し、柔らかな光を世界に注いでいる。
 昼でも薄暗かった『惑いの森』は更に闇が濃くなっていたが──二人は全く迷うことなく、聖域の中心へと、女神の下へと走っていた。
 女神の小宇宙はどこにいても、眩しく感じられる。
 そして、傍らに在る互いの小宇宙も──もう、見失うことはないだろう。



 てなわけでの『誕生日話』でしたが……何で、こう暗さが付き纏うんだっ! ある意味、笑えるぞっ!! でもまぁ、話の流れからして、いきなり明るいだけの世界突入なんて、輝の頭ン中では無理な展開。一度は乗り越えなきゃならない『壁』ということですね。 これで、何とか兄弟のギクシャクも解消に向かうだろう……ということで、メデタシメデタシ^^
 初めての『お題』抜きでもありましたが、相変わらず、タイトル決めで苦労します。毎度、何に迷うって、タイトルで一番、迷うのが常。迷った挙句に今回は『標なき奥津城』などと小難しい?モンに。
 『奥津城』は上代語での『墓』の意。『神や霊が鎮まる場』で、上代なら『古墳』などの『貴人の墓』ということですね。『奥津城』の漢字と語感が気に入って、使ってみたかったと。
 『標《しるべ》はそのまま『道標・標識』などですが、『標《しめ》と読む場合は『場所を限るための標としての杭や縄』で、『標縄《しめなわ》『神域』『聖域』と俗世を区切るもの、とされることに通じます。てなわけで、ちょい二重の意味を込めてみました☆
 でも、『誕生日話』のタイトルに『墓』だなんて──やっぱ遠いよなぁ。

 ワインといえば、イタリアやフランスですが、ギリシャも風土的には適しているそうです。っても、輝は全然、詳しくないけど──『ネメア・リザーブ』は有名どころの傑作ギリシャワインらしいです。
 ネメア種の中でも、限られた年にしか採れない限定種。但し、アイオリアの生年がその限定の年かは定かではない(爆) 大統領公邸でのレセプションには必ず使われるほどで、入手困難だとか。因みに『赤の辛口』 アイオリア向きかな、っと。あの後、アイオロス兄さんに殆ど飲まれたような気がしないでもないけど^^;;;

 ところで、『誕生日事典・獅子座』によると、『8月16日生まれ』の人は一言で表すと『ハイ・ボルテージ人間』だそうな(核爆)

2007.08.29.

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