黄昏の夢

Dreams


 ──夢は幻……
 ──幻は幻……
 ──現は現……
 ──記憶は記憶……

──夢が幻か?
──幻が幻か?
──現が現か?

──夢は記憶か?
──記憶は現か?


      過ぎ去りし刻は全て──……、
      未だ来ぬ刻は何れか──……。


 夜ごとに現れる懐かしい光景に、囚われかけていた。
 危うく、引きずり込まれるところだった。
 戻れなくなるところだった。
 まだ、迎えてはくれないはずなのに──……。



「お早うございます、アッテンボロー提督」
「おぅ、早よっ、ユリアン。あ、お早うございます! キャゼルヌ中将」
 元気いっぱいの朝の挨拶と砕けた敬礼。
 まるで、初めて会った十五年前にでも戻ったかのようで──……。
「よう。……ちゃんと、眠れたか」
「お陰様で。先輩には御迷惑をおかけしました」
 互いに聞こえる程度に声を潜めると、チョコンとお辞儀してみせる。些か、気恥ずかしげに。
 そして、少し離れて、窺っていたユリアンに向き、
「さぁ、司令官殿。今日もやることは山積みだぞ」
「──はいっ」
 昨日、感じたような違和感は全くない。
 ヤン・ウェンリーが彼らの前にいて、彼らを率いていた頃と寸分も違わぬような錯覚すら受ける。無論、そんなことはあり得ないのだが……。

 前途は多難──だが、それでも、
『人間は主義や思想のために戦うんじゃない。主義や思想を体現した人のために戦うんだ』
 それだけを拠り所に、今は前進あるのみ……。

(7)

初出 1997年8月16日発行 『Dreiklang』所収



 とまぁ、エラく間が空きましたが、完結にございます。といっても、大筋は全く変わっていませんが。最近、上げた章だけ、文脈や表現を多少、改めた程度です。
 何だかんだで、読み直せば、またまた入り込める作品ですしね。でもって、十年以上のブランクの果てに、また何か書いてみたいなぁ☆ とかチラッと思ってしまったり。しかも、以前は全く浮かびもしなかった『伝説後の歴史』──なんていうと、大層ですが、要するに原作後も朧気ではあるけど、ちょっとだけチラチラしたりしてます。だからって、書けるかどうかは未知数ですけどね。とりあえず、原作を通しで、ちゃんと読んでみよっかな。新年は。

2015.12.27.

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